銀行ATMのイメージ
銀行の手続きは、こうした窓口とは離れた場所にあるコンピューターが処理する

銀行での口座開設、預け入れ、振り込み、引き出し。我々が普段からしているなにげない手続きはすべて、コンピューターが処理して初めて完了する。それらの多くは将来、Amazon.com(アマゾン)の用意した環境で管理するようになるかもしれない。

周知の通り、Amazon.comの傘下にあるAmazon Web Services(AWS)は、インターネットを通じて離れた場所から接続できるコンピューターを大量に用意し、有料でほかの企業が利用できるようにしている。いわゆる「クラウド」の一種だ。


AWSのロゴイメージ
ショッピングだけじゃない、Amazon Web Servicesも存在感

今やiPhoneなどから利用できるゲームも、映画・ドラマ・アニメの配信も、ショッピングも、少なからぬ割合で、AWSが支えている。

銀行は従来、お金を扱う分野だけに中核となる業務(Core banking)については専用の環境にコンピューターを確保してきたが、最近はAWSに任せてしまってもよいのではないか、安全かつ便利で、低コストではないかという考えも出てきている。

日本では三菱東京UFJ銀行が、AWSの採用に前向きな姿勢を示しているとの報道が出たのは記憶に新しい。

海外では例えば、2016年に英国のOakNorth Bank(オークノース・バンク)という新興の小さな銀行が、実際にAWSを本格導入した。その際、役に立ったのがMambu(マンブー)という企業の製品で、銀行の中核となる業務をクラウドで行えるようにと開発したものだ。

Mambu社のロゴ画像
Mambuの製品は、銀行の中核が「クラウド」に移っていく可能性を示す

オークノース・バンクは先進技術を駆使し、ベンチャー企業の育成などに力を入れた独特な金融機関で、このようなやり方がすぐさま個人の預金者を沢山かかえた一般の銀行に通じる訳ではないが、着々と準備は整いつつあると感じる。

では一般の銀行が、AWSを中核となる業務に利用するのはいつごろだろうか。著名なニュースサイト「Computerworld」は4月に「2020年」と大胆な予測を紹介している。「欧州のPSD2(決済サービス指令II)やSEPA(単一ユーロ決済圏)インスタント決済が始まったあとで、津波のように」起こるという。

もっとも主に欧州を前提にした話だから、日本ではまた事情が変わってくるだろう。Mambuのような製品がさらに発展、充実し、性能や安全性についても海外で確証がとれてはじめて、という流れになるだろうか。

ちなみにAWSにはライバルもいて、Googleが手掛けているGoogle Cloud Platform(GCP)や、MicrosoftのAzureなどが有名。それぞれ銀行への売り込みにも熱心で、ひょっとしたらいつも使っている検索エンジンや、PCの中身を作っているメーカーが、自分の銀行口座のある環境を管理している、ということになるかもしれない。