Clova WAVEのイメージ
発端はLINEのスマートスピーカー

LINEとAmazon.co.jp(アマゾン)の対立が続いている。LINE製スマートスピーカーを、アマゾンが販売禁止にしたまますでに1か月あまり。LINEはアマゾン内に出していた仮想店舗を休業にし、今後は直販サイトへの集約を進める考え。

スマートスピーカーは家庭の居間などに置いて、音声で呼びかけるとインターネット検索をしたり、スケジュールを確認したりでき、結果を音声で読み上げてもらえる。スマートフォンの次に流行する製品として期待が集まる。


LINEもスマートスピーカー「Clova WAVE」などを開発しており、10月5日から関連グッズを販売する店舗「LINE FRIENDS STORE」で取り扱うほか、アマゾンのマーケットプレイスや楽天市場といった大手ショッピングサイトにある支店でも販売していた。

しかし11月8日、アマゾンが予告なしにClova WAVEの商品ページを削除。気づいたLINEが問い合わせたところ、販売禁止の対象のため出品取り消しになったとの回答だった。

おそらく、アマゾンも独自にスマートスピーカー「Amazon Echo(エコー)」などを出しているため、競合製品を売り場から排除する目的というのが、もっぱらの観測だ。

アマゾンは以前から、テレビなどでインターネットを便利に利用できる「Fire TV(ファイアティーヴィー)」を販売するにあたり、同様の措置をとってきた。競合製品である「Chromecast(クロームキャスト)」を開発するGoogle(グーグル)は不満を訴え、報復として傘下に置いているYouTubeをファイアティーヴィーなどで視聴できなくすると言明。けっきょくアマゾンが折れてクロームキャストなどの取り扱いを始めた。

競合製品に対するアマゾンの態度変更により、LINEのスマートスピーカーにも好機がおとずれるかと思いきや、そうはいかなかった。LINEは自社サイトでの直販に重きを置いていく方針。

一連の動きはいささか皮肉だ。アマゾン、そしてグーグルも米国で「ネットワーク中立性(network neutrality)」を強く主張してきた。閲覧しているWebサイト、利用しているアプリケーションなどによって差別せずに、通信会社や政府は通信環境を用意すべきという考えだ。

ネットワーク中立性がなければ、通信事業者は特定のサイトやアプリだけを見放題にする「ゼロ・レーティング」などを進め、ひとにぎりの企業が人々の見るものやその値段を決めていくようになる、という懸念があった。

アマゾンやグーグルのようにサイトやアプリを運営する側にとっては、通信事業者がほかを優遇して不利になるのは困るという実際上の問題もある。

ところがそのアマゾンやグーグルも、高い市場シェアを武器に、ネット利用のための機器を購入しにくくしたり、あるいは特定の機器からサイトを閲覧できなくしたりしているさまが、あらためて明らかになった。そこには機器やサイトを使う一般の人の利便性という視点が欠けている。はたして通信環境に準じるインフラと呼んで差しつかえないほど存在感を持ったサイトの中立性を、巨大企業同士の牽制(けんせい)以外のやり方でどう担保していくのか、今後の課題となりそうだ。