AI技術のイメージ
壁をハンマーでたたく「打音検査」、従来は熟練の検査員にたよっていた

人工知能(AI)向け技術を応用することで、従来は経験豊かな職人の仕事だった分野も自動化が図れそうだ。例えばトンネルの壁などをハンマーでたたいた音から異常を聴き分ける、といった難しい作業だ。

20世紀の高度成長期にいっせいに整備が進んだ日本の橋やトンネルなどは老朽化が進んでいる。いちはやく異常を見つけ出すのは目視による確認と、ハンマーでコンクリートをたたいて調べる「打音検査」が主流だ。


だがそうした作業は、熟練の点検員の経験や感覚に依存していて、高齢化によって担い手は減ってきている。

国や道路会社では人手不足を補うべく、AI向け技術の1つ機械学習を生かそうと模索している。今回は産業技術総合研究所、首都高技術、東日本高速道路、テクニーが協力して、打音検査を支援するシステムを開発した。

実際の現場でハンマーでたたいた際に鳴る音の違いをデータとして教え込み、熟練の点検員顔負けのするどさで聴き分けるように育てた。

あとは壁などに計測装置をたてかけておいて、壁を打てば無線でつながったタブレットが即座に分析。異常のある場所とその度合いをリアルタイムに専用の携帯機器に通知する。さらに異常がどのように広がっているかがひとめで分かるようなマップもあわせて作成する。

AI打音検査の機器
計測機器とタブレット(左)、異常を通知する携帯機器(右)

熟練の点検員がいなくても、見落としなく作業がこなせるだけでなく、図面などを作る手間を大きく省ける。

産総研などでは、1980年代から現在の機械学習につながる技術を研究していて、従来は写真や動画を分析して異常を検知する手法を開発してきたが、最近は音響や振動に対象を広げたのだそう。

2018年度以降に社会実装をめざしている。また今後は橋などを支える「RC床版」を桁下から検査できるようにし、検査対象を広げていく予定だとか。