旅するネコ写真家 森永健一さんに聞いた「ネコを撮る5つのコツ」

「海外や地方のグルメを堪能したい」「世界遺産を見に行きたい」などなど、旅に出る理由は様々。でも最近はネコの写真を撮影するために旅行に行くという人も増えています。「ネコ写真家と訪れるXX」なんて企画を販売するツアー会社も珍しくなくなってきました。

そこまで大掛かりな旅でなくても、一人でふらりとどこかにかけ、自由に動きまわりながら外ネコの写真を撮りたいという人もいるはず。そんな外ネコ撮影旅行では、どんなことに気を付ければ良いのでしょうか?“旅するネコ写真家”森永健一さんに、外ネコを撮影する5つのコツを伺いました。


■森永さんって、どんな人?

森永健一さんは、フィルムカメラ時代から20年以上に渡って世界中のネコを撮り続けている“旅するネコ写真家”。ヨーロッパ、東南アジア、中近東やオセアニアなど、世界各地の風景と、そこで生きる外ネコたちの姿を撮影してきた方です。

旅するネコ写真家 森永健一さんに聞いた「ネコを撮る5つのコツ」
「世界が、相手ニャ!」

森永さんは、ネコ雑誌を中心に旅やネコに関するフォトエッセイを発表されてきました。雑誌「CATS」では「ネコのいる風景」「ユーラシア大陸のネコたち」を、雑誌「NEKO」では「路地裏ニャン方見聞録」を長期連載されていたので、そこで森永さんを知ったという方も多いのではないでしょうか?

そんな森永さんによるネコ撮影のコツを実践すれば、外ネコのより自然な姿を撮影できるようになるかもしれません。

■5つのコツ

1.カメラは常に出しっぱなしに
森永さんからの最初のアドバイスは、カメラをいつも肩に構え、お腹より下に下げないこと。面白いシーンに出くわしたとき、間髪を入れずにシャッターを切れる状態を保つことだそうです。

飼い猫やご近所の顔見知りネコであれば、撮影者の準備を待ってくれることも。でも外ネコ撮影では、そのネコとは初対面であることがほとんど。初対面のネコが、撮影者がカメラを用意する前に取っていた面白いポーズを再現してくれる可能性は低いでしょう。ある意味、ネコ写真は報道写真。その一瞬をスクープする必要があります。

旅するネコ写真家 森永健一さんに聞いた「ネコを撮る5つのコツ」
このネコさんに翌日、「もう一度お参りしてくれる?」とお願いしても
多分、ムリです

森永さんはブライダルカメラマンとしても知られる方で、結婚式後のパーティ会場でも写真撮影をされています。パーティ会場では常に周囲に気を配り、参加者の笑い声のある方に移動し、会場内で盛り上がりが起こりそうな場所があればいち早くそこに駆けつけて、いつでも撮影できるようスタンバイ。その際に、カメラはいつも肩に構えているそうです。

そういう意味で、外ネコの撮影と結婚式後のパーティの撮影には共通点があるのだとか。森永さんは今日も腕や肘の痛みに耐えつつ、何か起こりそうな場所に走っています。

旅するネコ写真家 森永健一さんに聞いた「ネコを撮る5つのコツ」
森永さんによる「ひな壇ネコ」
こんな一瞬も逃しません

2. たくさん歩き、たくさん撮る
森永さんによれば、これがもっとも大事なのだそう。面白い写真が撮れる確率があがるそうです。

例えば、行きにネコを見つけた場所があったとしたら、帰りにもそこに寄ってみる。そうすると、さっきは一人(?)でじっとしていただけのネコが、友だちと一緒に遊んでいるかもしれない。そこでカワイイポーズを撮れるかもしれないからです。

また、同じ場所であったとしても、時間の経過により周囲の雰囲気が変わることも。すると、まったく違う写真が撮れることもあります。

旅するネコ写真家 森永健一さんに聞いた「ネコを撮る5つのコツ」
例えば昼間は青がまぶしかった場所が

旅するネコ写真家 森永健一さんに聞いた「ネコを撮る5つのコツ」
夕方には赤く染まっていたりします

カメラを常に構え、ネコを探してたくさん歩き、たくさん撮影する。これが森永さん流極意のひとつのようです。


3. ネコを見つけたら、静かに
ターゲットとなるネコを見つけたら、静かに行動するのが重要。気持ちが盛り上がってしまっても大きな声をあげたり急な動きをしたりせず、身体を小さくしてゆっくりと近づくと良いそうです。

そして良い写真を撮るなら、ネコと仲良くなるのが大事。だからといって餌をあげたりするのではなく、例えば指の匂いをかがせたりして親密度を高めるのが、面白い写真を撮れるコツみたいです。

旅するネコ写真家 森永健一さんに聞いた「ネコを撮る5つのコツ」
「なかなか、良い匂いの指だニャ」

4.周囲の景色も切り取る
ネコを見つけたら、どうしてもネコにズームしてしまいがち。でも、クローズアップで撮影してしまったら、ネコ以外の要素が作品から消えてしまい、あまり面白くない写真になってしまうことも。

旅するネコ写真家 森永健一さんに聞いた「ネコを撮る5つのコツ」
「ニャンですと!」

撮影するときには、ネコだけでなく周囲の風景も一緒に切り取るのがポイント。それによって、被写体となったネコの生活を想像できるようになります。

飼い猫ではないお外ネコたちは、飼い主から毎日餌をもらえるわけではありません。例えば、島ネコであれば、漁師さんや釣り人から魚を分けてもらってそれを食べていたりします。そんなネコの生活が垣間見える写真からは、物語を感じることができます。

旅するネコ写真家 森永健一さんに聞いた「ネコを撮る5つのコツ」
物語のある写真の例1:釣り人に、そっと接近するネコ

旅するネコ写真家 森永健一さんに聞いた「ネコを撮る5つのコツ」
物語のある写真の例2:お魚をゲットして、一目散に退散するネコ

5. できれば、一人旅
外ネコを撮影する場合、友だちと一緒だとネコに警戒されてしまい、ありのままのネコの姿を撮影できないことがあるそう。外ネコを撮影する際には、できれば一人旅が良いそうです。

旅するネコ写真家 森永健一さんに聞いた「ネコを撮る5つのコツ」
「あらあんた、一人旅?
苦労してるのね」

逆に、友だちと2人で旅にでかけたときには、ネコに遊んでもらうそう。撮影目的の旅ではあまりネコと遊べないことも多い森永さんは、複数人ででかけたときには思いっきりネコとのふれあいを楽しむそうです。

旅するネコ写真家 森永健一さんに聞いた「ネコを撮る5つのコツ」
遊んでもらっている例
「イエイ!」

おまけ―ネコよけを探す
街中での撮影では、ネコが見つからないときも。そんなとき森永さんは、ネコよけを目当てにして探すことがあると語ってくれました。

ペットボトルに水を入れ、道路わきなどに置かれたネコよけ。あれにはネコを寄せ付けない効果はないらしいのですが、このネコよけが置かれている場所の周辺には、ネコがいることが多いのだそう。ネコよけの周囲をゆっくりと歩いてみることで、ネコに出会える確率が高まるそうです。

■あきらめニャければうまくいく
さて、そんな森永さんのネコ写真をもっと見てみたい!という方におススメなのが、写真集「あきらめニャければうまくいく」。これは“猫の島”とも呼ばれる相島のネコたちを思う存分楽しめる一冊です。

写真集「あきらめニャければうまくいく」
相島のネコたち、てんこもりです!

50枚近い写真の約9割が相島のネコたち。前述のコツ4に「周囲の景色も切り取る」とありますが、写真集に収められている写真はすべてがそのような作品で、ネコのカワイイ姿を眺めていると、いつの間にか相島でのネコと人との生活までもが見えてくるような、そんな写真集に仕上がっています。

写真集「あきらめニャければうまくいく」
「干し魚を、警備してますニャ
仕事が終わったら、漁師さんにお魚をもらえるニャ」

森永さんによる5つのコツを意識しながらネコを撮影し、そのあとで森永さんの写真集をもう一度開いてみれば、それまでとは違ういろいろなものが見えてくるかも。写真を撮影するのも見るのも、2倍、3倍に楽しめるようになるかもしれません。

写真集「あきらめニャければうまくいく」は、10月5日にはAmazon.co.jpで電子書籍(Kindle版)も配信開始されます。もちろん、紙版もありますよ。

写真集「あきらめニャければうまくいく」
「良いことが、ありますように」

(本稿内の画像は、森永健一さんからご提供を頂きました)