トンボをドローンにする「DragonflEye」プロジェクト

ドレイパー研究所とハワード・ヒューズ医学研究所は共同で、トンボをドローンにする技術を開発している。トンボにバックパックのようなコントロ-ラーを装着して遠く離れた場所からトンボを操縦。偵察活動などに活かそうというものだ。

昆虫をリモートコントロールする試みは以前から存在している。2012年には米国ノースカロライナ州立大学の研究者チームが、ゴキブリを操縦する技術を発表した。これは地震などで倒壊し、人が入れない建物の中で生存者を捜索する方法として開発されたものだ。

トンボをドローンにする「DragonflEye」プロジェクト
参考画像:米国ノースカロライナ州立大学の研究者チームによるリモコンゴキブリ
災害救助目的で開発された

その後、米国ではiPhoneでゴキブリを操縦可能にする学習キット「RoboRoach」が販売開始された。

トンボをドローンにする「DragonflEye」プロジェクト
iPhoneでゴキブリを操縦可能にする「RoboRoach」
学生が神経回路の仕組みを学ぶための学習キット

2015年には米国カリフォルニア大学バークレー校とシンガポール南洋理工大学が空中を飛ぶ甲虫をリモートコントロールする技術を公表。ゴキブリのように地面を這って移動する昆虫よりも、より広い範囲で捜索活動を実施できるとしていた。

トンボをドローンにする「DragonflEye」プロジェクト
空飛ぶ甲虫をリモートコントロールする技術
左右への旋回や空中停止をコントロール可能

だが子供のころにカブトムシが飛ぶ様子を見た人はわかるだろうが、実は甲虫は飛行があまり得意ではない。そこで白羽の矢が立ったのが、今回ドレイパー研究所とハワード・ヒューズ医学研究所が研究対象としているトンボというわけだ。

トンボは甲虫に比べ、水平飛行が上手い。旋回やホバリングなども器用にこなす。飛翔速度にも優れており、種類にもよるが瞬間的には時速100キロ以上のスピードを出せるものもいる。このようなトンボをドローン化すれば、特定の場所でホバリングできる能力を活かした偵察活動が可能になるだろう。

ではどのようにしてトンボをコントロールしているのだろうか。ハワード・ヒューズ医学研究所ではトンボの神経系に存在する“ステアリング”ニューロンを研究。目に存在するものと似た遺伝子を“ステアリング”ニューロンに挿入し、光に反応するようにした。

ドレイパー研究所では、オプトロードと呼ばれる小さな光学構造を開発。光パルスによって、“ステアリング”ニューロンを刺激し、トンボをリモートコントロール可能な“バックパック”に仕上げた。従来の光ファイバーでは固すぎて小さなトンボの神経索をうまくカバーできなかったが、ドレイパー研究所が開発したオプトロードでは、これが可能になったという。

トンボをドローンにする「DragonflEye」プロジェクト
トンボの背中に取り付けられるボードやコンポーネント

このオプトロードは、他の神経には影響を与えることなく、目指す神経だけを動かせるのが特徴だそうだ。

さて、この技術は、トンボ以外の昆虫への適用にも期待が寄せられている。例えばここ数年、「蜂群崩壊症候群」が問題となっているミツバチだ。

米国では、ナッツやベリー、リンゴなど多くの作物がミツバチによる授粉に頼っているが、ミツバチの数はこの25年でほぼ半減し、農業に大きな打撃を与えている。ドレイパー研究所では、ミツバチをリモートコントロール可能にすることで、ミツバチによる授粉を手助けできるのではと期待している。また、ミツバチの行動パターンをモニタリングすることで、ミツバチの失踪を防ぐ手助けにもなりうるとしている。

(本記事中の1枚目と5枚目の画像は、ドレイパー研究所の許諾を得て掲載しています)