曲げられるラジオ
曲げられるラジオを内蔵した野球帽

「曲げられるラジオ」をツバの内部に組み込んだ野球帽を、産業技術総合研究所(産総研)が開発した。

曲げられるラジオとは、やわらかく透明なフイルムのうえに銅でできたインクを印刷し、電子回路を作成したもの。帽子のツバのような、平面ではない部分にとりつけられるのが魅力だ。


曲げられるラジオ本体
やわらかいフィルムの上に銅のインクを印刷

そもそも金属をインクにして柔軟な素材に電子回路を印刷する技術は、衣服や小物など、身のまわりのものに通信機能を持たせて便利に使う「モノのインターネット(IoT)」や「ウエアラブルデバイス」に有望として以前から注目を集めている。

すでに東大発のベンチャー企業が開発した、銀のインク「AgIC」などは、かなり知られている。

銀のインクAgICのイメージ
「AgIC」などの銀のインクはすでに有名

ただ銀はコストが高く、マイグレーション(金属のインクが周囲の絶縁物の上を移動して起きる不具合)による短絡が起きやすいなどの課題もあるそう。

そこで従来の電子機器でよく使う銅でもうまく配線ができるようにとの発想から研究が進んだ。低温プラズマ焼結(CPS)法という技術を組み合わせている。

実際にできあがった「曲げられるラジオ」は厚さを1.8mm以下に抑えることで、野球帽のツバ内部へ組み込めた。アンテナはツバの芯材を包む布地に縫い込んであり、ラジオ放送を安定して受信できる。かぶっている人の好みによって帽子のツバを曲げても受信には支障がなく、とても軽いため違和感もない。帽子をかぶったまま電源のオン・オフやボリューム調整、選局が可能。

曲げられるラジオの着用例
なかなか便利そうだ

実況中継を聴きながらスポーツ観戦をしたり、ハイキングやジョギング、農作業時などにラジオ放送を聞けたりなど、生活の一部にすんなりと溶け込むようなウエアラブルデバイスだそう。ラジオ局などが配布するキャンペーングッズとしても提案できるとか。

産総研は今後も改良を進め、3年後をめどに銅のインクを使ったさまざまな電子機器を効率よく量産できるようにしたい考え。

なお曲げられるラジオは、6月7~9日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される「第47回国際電子回路産業展(JPCA Show 2017)」で展示される。