PHSの製品イメージ

そう遠くない昔。携帯電話(ケータイ)と並び、簡単に持ち歩ける通話手段として広まっていた「PHS」。ちまたで見かける機会はすっかり減ったが、以前使っていた機種を大切に保存している人はまだいる。その1つが十数年の眠りから覚め、懐かしい音色を響かせた。

PHS、Personal Handy-phone Systemは、固定電話の子機を無線で使える「コードレス」の発展形として20世紀末に登場した。消費電力の低さなどさまざまな利点があり、独特な機種も多く、ファンも少なくなかったが、ケータイの進歩が勝り、次第に姿を消していった。


とはいえ、おりにふれてなつかしむ人はまだ多い。Twitterに「くまみ」氏が投稿した動画も、かつて時間をともにしたPHSへの追憶に満ちた内容だ。


「サンヨーのPHS「J90」がまだ生きていたので、十何年間ぶりに着メロ作曲機能を弄ってみた。電池は死んでしまったらしく、充電器から外すと即落ちします」

簡潔な説明のついた短い映像と楽曲は、今はなき三洋電機が開発し、DDIポケットが2000年に送り出したPHSの名機の1つ「RZ-J90(Leje、レジェ)」によるもの。

レジェの製品イメージ

折りたたみ型でカラーディスプレイとカメラ付き。何より「feelsound」という先端の音響機能を備え、100音色12和音に対応し、臨場感ある音楽を再生できるのが特徴だった。

当時、ケータイやPHSを使う人の最大の関心事の1つは、電話の着信音を楽曲に変える「着信メロディ(着メロ)」で、高音質で楽曲を奏でられる機種は魅力に富み、レジェは予約が殺到して在庫薄になるほどだった。

くまみ氏が購入したのは2001年ごろではないかという。もう使わなくなって久しかったようだが、しっかり保存していたせいか、動画ではfeelsound機能がきちんと働いているのがうかがえる。また、その持ち主が十数年を経てなお当時の操作画面を巧みに使いこなし、作曲、演奏するようすには、かつてPHSと着メロ文化がいかに身近で馴染深いものだったのかを、あらためて思い出さずにはいられない。