災害発生時には、国内の主要な公衆無線LAN(Wi-Fi)サービスは、誰でも無料で利用できるようになる。スマートフォンの Wi-Fi 設定などで「00000JAPAN」と入力すればすぐ使える。こんな取り組みが始まった。

災害時に誰でも無料で使える公衆 Wi-Fi「00000JAPAN」がスタート、課題も
無線LANビジネス推進連絡会が公開したガイドライン

東日本大震災の際は、さまざまな公衆 Wi-Fi サービスがそれぞれ被災者のために独自の判断で無料解放を行ったが、今回は業界団体である「無線LANビジネス推進連絡会」がガイドラインを決めた。

スマートフォンなどから Wi-Fi に接続する際は混信を避けるため「SSID」と呼ばれる ID を使う。よく知られている SSID は NTT ドコモが用意している「0000docomo」や、KDDI(au)の「au_Wi-Fi」などだろう。

ガイドラインでは災害時に無料解放する公衆 Wi-Fi の統一 SSID「00000JAPAN」を新たに用意し、災害時に各社共通で使う方針を定めた。ユーザー認証や暗号化はせず、誰でもすぐに利用できるようにする。被災地で、普段使っているサービスの SSID が有効でなくても、00000JAPAN と入力すれば公衆 Wi-Fi につながる可能性がある。

意欲的な取り組みだが、課題も多いようだ。

災害用統一 SSID の目的は、緊急時にできるだけ多くの人が外部との連絡や情報入手の手段として公衆 Wi-Fi を利用できるようにすることだ。しかし被災者が皆、スマートフォンからの SSID の設定、入力といった操作に慣れているとは限らない。

連絡会が岩手県釜石市で行った実験では、参加者の半数が、統一 SSID を使って Wi-Fi に接続できなかったという。

今後の対策としては、防災訓練でこうした操作に慣れてもらったり、避難所にマニュアルを設置したり、統一 SSID に自動接続するアプリケーションを開発、配布したり、といった構想が出ている。

またほかの通信環境がなかなか回復せず、長期間の避難所生活を余儀なくされる状況では、公衆 Wi-Fi の利用目的は避難、救援から、日常の暮らしへと移行する。その際、クレジットカード番号をはじめ重要な個人情報をやりとりすると、通信内容を暗号化していないため、傍受などによるセキュリティリスクが生じてくる。この点についても事前の啓発など対策が必要だ。