タイヤのかわりに“足”が取り付けられた「Walking Bike」

「Walking Bike」は、テオ・ヤンセン氏の「ストランドビースト」にインスパイアされた自転車。米国のアーチスト&職人集団CARVによるWalking Bike製作プロジェクトチームによって製作された。「ストランドビースト」同様に不思議な、でも魅力的な、そしてむかでのような動きを見せてくれる。

テオ・ヤンセン氏による「ストランドビースト」
参考画像:風で動く「ストランドビースト」

ペダルを漕ぐと、4本の“足”が動き、自転車を前進させる。足の動きは緻密に制御されており、常に2~3本の足が接地して本体を安定させつつ、前進させる仕組みだ。足が前に戻る間、その足は宙に浮いた状態になるが、自転車自体が不安定になることはない。


「Walking Bike」では常に3点接地
基本は“3点接地”

「ストランドビースト」と「Walking Bike」の違いは動力。「ストランドビースト」は風を受けて動くが、「Walking Bike」は人間がペダルを漕がなければならない。動画を見る限りは、ペダルは“足”の位置によってはとても重くなるようで、速度が一定しないだけでなく、ときに停止してしまい、再始動に苦労している様子が見てとれる。


タイヤのかわりに足が取り付けられた「Walking Bike」

「Walking Bike」は米国西海岸の都市サンタバーバラの夏のお祭り「Summer Solstice Celebration 2015」で初披露された。このとき、「Walking Bike」に搭乗した女性は、およそ3.2キロの距離を軽々と歩いた(走った?)そうだ。また観客は、「Walking Bike」に歓声を送ったという。

「Summer Solstice Celebration 2015」で初披露された「Walking Bike」
「Summer Solstice Celebration 2015」で初披露された「Walking Bike」
自転車も気になるが、女性の帽子もかなり気になる…。


「Walking Bike」が「Summer Solstice Celebration 2015」で初披露されたときの映像

CARVは今年になって、この「Walking Bike」を美しく塗装。ロサンゼルスの撮影クルーによる公式画像を撮影し、公開した。プロの手による画像は、「Walking Bike」の仕組みをより分かりやすいものにしている。

「Walking Bike」ドライブトレイン周辺
「Walking Bike」のドライブトレイン(?)周辺画像

自転車は、人間が作った乗り物の中でも、圧倒的に高いエネルギー効率を誇る乗り物。歩いたり走ったりするよりも高速でかつ楽に移動できることからもそれがわかるだろう。ペダルを踏む上下運動を回転運動に変換する仕組みがこれを実現した。

だが、新たに公開された画像を見ると、「Walking Bike」ではせっかくの回転運動をクランクシャフトで「前後運動+なにやらややこしい運動」に変換していることがわかる。「Walking Bike」は、アーティスティックな動きと引き換えに、歩くよりも遅いスピードと重いペダルを手に入れた。これはムダだ。ムダではあるが、興味深いアートでもある。

プロが撮影した「Walking Bike」画像
そういえば「ストランドビースト」の動きは、少し、エロティックだ

「Walking Bike」製作プロジェクトチームは、今後も新しいプロジェクトを展開していくので期待してほしいとしている。

新しいプロジェクトがどんなものかは現時点では分からない。だが個人的な希望としては、後輪だけでなく前輪も「ストランドビースト」のような“足”が取り付けられた自転車であれば面白いなと思ってしまう。前後輪があのむかでのような動きを見せたら、ちょっと恐ろしく、でも魅力的なものになるのではないだろうか?

もっとも、いまよりももっと遅く、さらに体力が必要なものになってしまうかもしれないけれど。

2015年に公開されたときの「Walking Bike」
今年は、何が公開される?