
1月後半は大企業、官公庁がアニメ・漫画文化を取り込んだキャンペーンをインターネット上で相次ぎ打ち出した。どれも特色ある興味深い内容だが、気にかかった点として「女性キャラクター」が目立った。
1月18日には日本を代表する自動車メーカー、トヨタ自動車がハイブリッド車「PRIUS(プリウス)」の部品を女性に擬人化。

21日には日本政府の中枢である内閣官房がサイバーセキュリティ対策のため人気アニメ「攻殻機動隊」の主人公「草薙素子」を大きく描いたポスターを作った。

同日には振り込め詐欺対策のための警視庁公認キャラクター「テワタサナイーヌ」がイラストコンテストを開始している。

いずれもインターネットを駆使して、アニメ・漫画を好む、いわゆる「オタク」層を取り込もうという試み。普段は堅苦しい雰囲気のある大企業、官公庁が、あえて柔らかなやり方でメッセージを伝えようとする姿勢を微笑ましく思った人も少なくないだろう。
ただし偶然とはいえ、方向性の似た試みが続いた印象だ。アニメ・漫画文化を好きな人がいるように嫌う人もいる。特に公共性のある組織による、女性キャラクターだけに重点を置くキャンペーンが目立つと、反発を招きやすい。
また、こうしたキャンペーンですくいとれるのは、多様な広がりを持つオタク層の、あくまで一部。当たり前だがアニメ、漫画を好むのは男性だけではなく、膨大な数の女性も文化の作り手、受け手として主要な役割を果たしている。
例えば2014年に女性にも人気の漫画「テニスの王子様」の男性キャラクターが、千葉県警とコラボレーションを行い、振り込め詐欺撲滅ポスターを作った際はファンのあいだで話題になった。2015年にかけては、人気ゲーム「刀剣乱舞」に登場する男性キャラクターに縁の深い日本刀を展示する博物館・美術館などの自治体施設が多かった。
大企業・官公庁による同様の取り組みも、今後インターネット上でいっそう勢いを増して欲しいところ。
もちろん組織内で権限を持つ担当者の性別や趣味嗜好にもよるだろうが、アニメ・漫画文化の特徴の1つである「多様性」を生かせるよう、幅広い視野を持った、彩り豊かなキャンペーンを期待したい。例えば次は人気アニメ「おそ松さん」などを起用してみるのは、いかがだろうか。
【追記 2016/1/22 18:25】
「おそ松さん」についてはすでに、2015年10月に厚生労働省の最低賃金キャンペーンで登場しているとの指摘があった。
「おそ松さん」をはじめ女性に人気のアニメ、漫画、ゲームなどと大企業、官公庁とのタイアップについて、インターネットコム編集部では引き続き情報提供を歓迎する。