毀誉褒貶(きよほうへん)の激しさはPtoP技術の常か
毀誉褒貶(きよほうへん)の激しさはPtoP技術の常か

米国でITの話題を取り扱うニュースサイトの一部はかつて仮想通貨/暗号通貨「Bitcoin(ビットコイン)」を賞賛し、スキャンダルの中も意義を強調してきた。しかし中央銀行が警戒しつつその技術を評価する頃になって、今度は厳しい批判を浴びせている。

ビットコインは、特定の企業などが集約して発行したり管理したりせず、分散型元帳(ブロックチェーン)という技術によって改竄(かいざん)やごまかしを防ぐ仕組みになっている。銀行口座やクレジットカードを持っていなくても利用でき、低コスト、迅速、簡便な支払い手段になり得る。


たいていは「取引所」と呼ぶサービスを通じて現実の通貨と交換し、利用する。2014年には世界最大の取引所であるMt.Gox(マウントゴックス)が破綻。経営陣の不可解な行動も明らかになって、イメージは悪化した。日本でも消費者庁はリスクを適切に理解するようあらためて呼び掛けたほどだ。

しかしビットコインは終わった訳ではない、というのが当時のニュースサイトの見方だった。実際、2015年にかけてむしろ勢いは拡大。日本銀行も警戒しつつ、ビットコインを支えるブロックチェーン技術に注目するようになった。

ところが最近また米国ではビットコインは失敗だった、という論調が活発になってきた。

例えばITの話題を取り扱うニュースサイトの中でも、御意見番としての地位を持つTechCrunchが1月19日に公開した「Is Bitcoin’s Promise Going Up In Smoke?(ビットコインの約束は煙と消えた?)」という記事を見てみよう。

ビットコイン関連技術の開発にたずさわってきたMike Hearnが、この通貨は失敗だと宣言したことに始まり、中国の技術者が新たなビットコインを多く流通させる悪影響が生じているとか、運営体制が密室、独裁主義であるとか欠点を挙げている。

同じTechCrunchが、5か月前に公開した「The Mt.Gox Arrest Is The End Of The First Age Of Bitcoin(マウントゴックス検挙はビットコイン第一期の終わり)」という記事に比べるとほとんど180度の論調の違いと言って良い。

さほどこの分野の技術に詳しくない一般人は、短期間に変わる評価に右往左往せざるを得ないだろう。

TechCrunchの最新の記事ではビットコインを「In the beginning, Bitcoin was a noble experiment.(始まりにおいて、ビットコインは高貴な実験だった)」として堕落に眉をひそめているが、不正が取り沙汰されたマウントゴックスも比較的初期からビットコイン取引にかかわっていたことを考えると、ややドラマチックに言いすぎではという気もする。

いずれにせよ賞賛と同じく非難の報道についても、傾聴しつつよく吟味して冷静に受け止めたい。