オンラインデジタルスクラップブックサービス「Pinterest(ピンタレスト)」の日本法人が設立されて1年余り。国内の事業展開で目を引くのは、料理やファッションをテーマにしたワークショップの開催だ。公式ブログに掲載された写真には、ピンタレストの画像を参考に料理やアクセサリーなどを制作するユーザーたちの楽しげな様子が映し出されている。

オンラインサービスのピンタレストが、ワークショップというオフラインの活動に力を入れる理由は何だろうか?ピンタレスト・ジャパン代表取締役社長の定国直樹氏にお話をうかがった。

成長の鍵は“コミュニティ”--Pinterest Japan、2年目の展望
代表取締役社長の定国直樹氏

■ワークショップで“発見と実現”を体感

定国氏は、デジタルスクラップブックサービス「ピンタレスト」の魅力を、写真のコレクションに留まらない「発見と実現の場」と説明する。自分の興味ごとにストックした画像の中から夢や目標を“発見”し、行動を起こして“実現”する。そのような使い方こそが、ピンタレストの真価を実感できるそうだ。

定国氏自身も、自宅の装飾から仕事のプロジェクトまで幅広い場面でピンタレストを活用しているそうだが、ユーザーに「発見と実現」という理念を理解してもらうのは容易ではない。そこで選んだ手段の1つが、「発見と実現」を実際に体験してもらうワークショップだったという。

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定国氏が自宅ベランダのアイデア収集に作成した「ボード」

ワークショップは、フードスタイリングや夏フェス向けの花冠、ハロウィングッズなど、時季に合わせたテーマで開催。ピンタレストで見つけたイメージを実際に作ってみる企画はユーザーにも好評だといい、同社の狙い通り「発見と実現」の楽しさが伝わっているようだ。
 
作りたい花冠をピンタレストで“発見” (出典:ピンタレスト・ジャパン公式ブログ)
作りたい花冠をピンタレストで“発見”
(出典:ピンタレスト・ジャパン公式ブログ)
 
理想の花冠を“実現” (出典:ピンタレスト・ジャパン公式ブログ)
理想の花冠を“実現”
(出典:ピンタレスト・ジャパン公式ブログ)
 
ピンタレストを見ながらハロウィンのクッキーを制作 (出典:ピンタレスト・ジャパン公式ブログ)
ピンタレストを見ながらハロウィンのクッキーを制作
(出典:ピンタレスト・ジャパン公式ブログ)

ワークショップのほかにも、ブログや SNS、ニュースメールなどを活用して、楽しい使い方を発信してきたピンタレスト・ジャパン。国内の月間アクティブユーザー数は1年間で3倍に増加したといい、一過性のブームではない人気を獲得しつつあるようだ。

■コミュニティに育てられたピンタレスト

使い方の紹介に加えて、同社がワークショップに注力するもう1つの理由は、同じ関心をもつユーザーのコミュニティをつくり、ピンタレストについての口コミを広めることだ。マス広告と比べれば地道な広報活動にも見えるコミュニティづくりだが、全社的に強い思い入れがあるという。2010年に米国でサービスを開始したピンタレストは、コミュニティがもつ力に早くから注目。有力なブロガーたちと積極的にコンタクトをとり、口コミで魅力を広めてもらうことで、世界的なサービスにまで育てあげたそうだ。今でもピンタレスト本社はコミュニティがもつ発信力・影響力を重視しており、発表会にブロガーを招いたり、ユーザーとの交流の場を設けたりしているという。

定国氏は「ユーザーの受け取る情報量が激増したことにより、画一的な広告の力が弱まった現在は、ユーザーコミュニティの重要度が増している」と指摘。今年9月にはコミュニティマネジャーを増員して体制を強化しており、オンライン・オフライン双方におけるコミュニティづくりを推し進めていく意向を示した。

■2年目は活動を“グレードアップ”

2013年10月に設立され、2年目を迎えたピンタレスト・ジャパン。2年目は1年目と同様、「Pinterest コミュニティ形成」「企業アカウント活用の啓蒙」「プロダクトのさらなる機能向上」を戦略の核とするそうだが、コミュニティづくりの成果もあり、より幅広い事業展開が可能になったと定国氏は自信を見せる。今後はブランドやメーカーとのパートナーシップを強化するほか、ユーザー目線でピンタレストの魅力を広めてくれるアンバサダーの起用も計画しているそうだ。

様々な画像を豊富にそろえるだけでなく、夢の発見や人とのつながりも生み出すピンタレスト。「発見と実現」の体験がコミュニティで共有され、ピンタレストの外に向けても発信されることで、日本国内でも広く愛されるサービスへと成長していくかもしれない。