
警察が押収した10万本のナイフで作った天使像が、英国に登場し、すっかりインターネット上で話題になっている。刃でできた翼を広げる姿は恐ろしくも美しい。ナイフ犯罪の被害者へ捧げる芸術作品だ。
英国に刃でできた天使像が登場
Want to see #KNIFEANGEL on the #4thPlinth in #TrafalgarSquare? https://t.co/879eLm9HEt #savealife #surrenderyourknife @BBCNewsbeat plz RT pic.twitter.com/8FYNp4k3W9
— British Ironwork (@BritishIronwork) 2017年1月10日
全長8mにもおよぶ巨大な像は、英国シュロップシャーはオスウェストリーにあるBritish Ironwork Centre(英国鉄工芸センター)という施設が作った。
2017年に、首都ロンドンの中心部にあるトラファルガー広場の一角、芸術作品展示用の台座「フォース・プリンス」で披露すると、BBCなど大手メディアが紹介。まるでゲームに登場するキャラクターのような姿が話題になり、インターネット上でも広く拡散した。
日本ではTwitterなどで大いに注目の的になった。「かっこいいが天使のように感じられない」「強そう」「怖い」など、多数の刃物が持つ迫力に気おされたような感想が多かった。
しかし、よく見ると、ナイフをまとった天使はどこか悲しげな表情をしていないだろうか。人を傷つけ、苦しめる武器となった刃物の暗いさだめを代弁しているかのようだ。
日本にも刃でできた昇龍像が

同じように刃物でできた芸術作品として、日本の福井県越前市にある「昇龍」像を思い出した人もいる。
こちらは刃物の別の側面、人の暮らしに役立つ、家事や仕事を助ける力強い味方としての役割を感じさせる。包丁や鎌、鉈、小刀など合計2,967丁が鱗となり、爪となり、牙となり、角となっている。長さ2.6m、高さ1.8mの大きさだ。
越前市は、700年の伝統を有する越前打刃物の本場。開祖である鍛冶の千代鶴国安は日本刀を打つ鍛冶だったが、よいものを作るために今の越前市に訪れた際、近くに住む農民のために鎌を作る機会があり、そこから越前打刃物の歴史が始まったという。
昇龍の像は、千代鶴国安の故事にちなみ1964年、越前打刃物メーカーである龍泉刃物の会長、増谷浩氏が実行委員長として製作した。一時期はサビなども生じていたが、1988年、2008年と修復を重ね、今もJR武生駅に美しい姿を見せている。
それぞれの作品に込められた意味は異なるが、いずれも我々がふだんなにげなく触れている刃物について、あらためて畏怖を呼び起こさせるようなたたずまいがある。