東京工業大学名古屋大学は、火星表層に存在していた初期水量の50%以上が、誕生から4億年の間に大気を通じて宇宙空間へ流出、残りの水の大部分は気候変動などで氷となり、火星の地下に現在も存在する可能性があることを突き止めた。

火星表層の水の50%が、誕生から4億年の間に流出ー東工大、名古屋大らが発表
火星隕石の分析によって得られた火星表層の水の水素同位体比の時間変化(上)
と理論計算で得られた火星表層の水の量の時間変化(下)

今回の研究成果は、東京工業大学大学院理工学研究科の臼井寛裕助教と名古屋大学大学院理学研究科の黒川宏之博士研究員らによって行われた。水が、水素/酸素原子に解離し大気を通じて宇宙空間へ流出することで失われた場合、重水素と比較して軽い水素が選択的に流出する。火星に残存する水の水素同位体比の変化として、流出の履歴が残ることに着目し、火星隕石に含まれる水の高精度水素同位体分析データを用いた理論計算により、水が失われた時期や量を解明した。

火星は極少量の氷が極域に発見されている惑星だが、かつて大量の水が存在していたことは研究により示唆されてきた。今回の研究により、今後の火星探査計画の示唆や、生命誕生にとって重要な海の成立の条件の理解につながると期待されている。

今回の成果は、5月15日発行の欧州科学雑誌「アース&プラネタリー サイエンス レターズ(Earth & Planetary Science Letters)」に掲載される予定だという。