森永製菓がファンサイト「エンゼル PLUS」を立ち上げて1年。お菓子をテーマにした「掲示板」や社員が登場するブログ、プレゼントキャンペーンなどの企画が評判を呼び、2014年11月時点の会員数は約5万人、月間 PV は40万 PV に上っている。

創業115年という同社の歴史で初めて、「生活者との相互交流」を実現したというエンゼル PLUS。投稿されるファンの意見を商品開発に生かそうと、社内での注目も高まっているという。現在の運用や今後の展望について、同社コーポレートコミュニケーション部の岩崎育夫氏と橋詰史江氏にお話をうかがった。

お菓子好きが活発な交流--森永ファンサイトが生み出す新たなブランド価値
森永製菓のファンサイト「エンゼル PLUS」

■マーケターも注目の「生の声」

現在ソーシャルメディアの積極的な活用に力を入れている森永製菓。Twitter や Facebook では多くのフォロワーやファンをもつ一方、生活者の素顔が見えづらく、またヒアリングはできてもアスキングができないため、相互交流に特化した場が新たに必要だと考えたという。そして2013年11月に開始したのが、会員制のファンサイト「エンゼル PLUS」だ。

エンゼル PLUS では、お菓子について自由に語れる掲示板を用意。好きなお菓子やこだわりの食べ方、レシピなど、様々な「テーマ」を会員自らが積極的に投稿し、コメントを介した交流を行っている。会員からは「お菓子のことをいろいろ話せる場ができて嬉しい」という声が寄せられており、30〜40代の女性を中心とするお菓子好きたちのニーズをつかんだようだ。

会員たちが積極的に投稿
会員たちが積極的に投稿

会員たちの活発な発信には、同社のマーケティング担当者たちも注目している。掲示板の内容をチェックするだけでなく、時には商品開発のアイデアを募集。「食べてみたいお菓子」や「新商品の感想」といったお題に、会員たちも自由闊達な回答を寄せている。岩崎氏は「通常のアンケート調査では、生活者が身構えてファクターがかかる場合もある」と指摘。従来の調査手法に加えてエンゼル PLUS の「生の声」も一緒に拾うことで、ニーズを網羅的につかめるようになると期待を寄せる。

同サイトはまた、肩肘張らない PR の場になっている点も興味深い。商品やサービスのリリース時には、担当の社員がサイト内のブログに登場。商品の魅力や開発秘話を会員に向けて発信している。フレンドリーな語り口の社員にコメントを返す会員も多く、コーポレートサイトでは難しい“親しみやすさ”の演出に成功しているようだ。
 
様々な担当者が登場するブログ
様々な担当者が登場するブログ

■ポイント付与でモチベーションを維持

ソーシャルメディアで重要なのは、サービス開始当初の“盛り上がり”をいかに維持するかだろう。同社はマーケティング支援事業などを展開するイーライフと共同でサイトを運営。話題性のあるコンテンツを提供し続けると共に、会員限定のキャンペーンも定期的に行うことで、継続的にログインしたくなるサイト作りを目指している。
 
 気軽に参加できる「投票」も人気コンテンツ
気軽に参加できる「投票」も人気コンテンツ

同サイトはまた、ログインや投稿などの回数に応じてポイントを付与する仕組みを導入。ポイント数をプレゼントやイベントなどの応募条件とすることで、積極的な参加を促している。今後は工場見学やワークショップなど、リアルのイベントも充実させることで、より密接な関係作りを進めていくそうだ。

肩肘張らない交流を通して、商品の PR だけでなく、生活者のニーズを詳細に把握することに成功したエンゼル PLUS。橋詰氏は2年目の運営について、「商品開発やプロモーションなど、社内での活用の幅を広げていきたい」と抱負を話す。今後は会員の意見を参考にするだけでなく、共同で商品開発を行うことも検討しているそうだ。そのうちに店頭で、「エンゼル PLUS 発」をうたったお菓子を見かけるようになるかもしれない。