“おっとっと”の鯉のぼりや、“パックンチョ”を使った手品。森永製菓のお菓子が生き生きと動きまわる動画が、ファンの間で評判になっている。動画のプラットフォームは、6秒動画アプリの「Vine」だ。

“おっとっと”や“パックンチョ”が生き生きと動き出す--6秒動画が人気の森永製菓、制作の舞台裏を聞く
森永製菓が展開する「Vine でおかしな6秒動画」

Vine は Twitter 社が提供する6秒ループ動画制作アプリ。画面を指で押さえている間だけ録画するシンプルな操作と、6秒間という気軽さが人気を集め、国内では10代〜20代を中心にユーザー数を伸ばしている。商品やイベントの紹介など、マーケティング目的で活用を始める企業も増加中だ。

森永製菓は2013年9月に Vine の利用を開始。特設サイト「Vine でおかしな6秒動画」で、お菓子をモチーフにした動画を公開している。これまでに公開した作品は40以上に上り、今では週1回の新作発表を心待ちにするファンも多いという。

同社は“6秒間の動画”を、どのような目的で活用しているのだろうか。同社コーポレートコミュニケーション部の岩崎育夫氏にお話をうかがった。

■「たのしく」を伝えられる動画コンテンツ

Vine 以外にも、YouTube の公式チャンネルなどで数多くの動画コンテンツを展開する森永製菓。岩崎氏はその理由として、同社のビジョン「おいしく、たのしく、すこやかに」を挙げる。マス広告に力を入れてきた同社だが、お菓子の「たのしさ」を何か新しい方法で表現したいと感じており、自由度の高いオリジナル動画であればそれを実現できると考えたそうだ。

その言葉通り、「キョロちゃん劇場」や「ぬ〜ぼ〜なこころ」などで公開されている微笑ましい動画は、商品の直接的な宣伝ではないにも関わらず、なぜかお菓子を食べたくなる楽しさにあふれている。楽しさに加えて“素人っぽさのある手作り感”も、ユーザーに親しみを感じさせる要素として重視しているそうだ。

Vine の動画制作においても、同社は“手作り感”を重視。おっとっとやチョコボール、ハイチュウなどのお菓子やキャラクターを登場させ、肩肘はらない、どこか温かみのある作品に仕上げている。季節感も大切にしており、5月であれば「子どもの日」、6月であれば「梅雨」など、公開日に合わせた“お題”をもとにコンテを作成しているそうだ。

撮影に要する時間は約30分から1時間。被写体を少しずつ動かすコマ撮りに相応の手間はかかるものの、Vine の撮影・編集機能も充実してきているため、作業はよりスムーズになったそうだ。なお、制作には同社社員のほか、映像コンテンツなどを手がけるビービーメディアも参加している。

 スマートフォンを固定して撮影
スマートフォンを固定して撮影

被写体を少しずつ動かしてコマ撮りする
被写体を少しずつ動かしてコマ撮りする

■老舗企業が Web で生み出す“新しさ”

創業115年の歴史をもつ森永製菓。高い知名度と市場シェアを誇る一方、「新しさ」や「かっこよさ」の訴求は弱く、若い世代の共感を十分に得られていないという問題意識もあるという。「おいしい」「親しみやすい」という従来のブランドイメージを維持しつつも、Web では新しいことに挑戦するという意気込みが社内にあり、Vine の取り組みもその一環として始まったようだ。

岩崎氏は Vine について「費用対効果の高い Web コンテンツ」と説明。無料アプリながら、手作り感のある面白い作品を簡単に制作できる上、Facebook や Twitter でシェアされやすい点を評価しているそうだ。今後はユーザーによる作品の募集なども行うことで、ファンとの交流やコンテンツの充実を図っていくとしている。

商品やイベントの宣伝、スタッフ紹介など、各社が様々な切り口で活用を模索する Vine。自社の商品を上手く活用し、ファンに喜ばれるコンテンツづくりに成功した森永製菓の事例は、ほかの企業にとって良い参考となりそうだ。