東京工業大学 旭硝子共同研究講座の稲葉誠二特任助教(現旭硝子)と伊藤節郎特任教授(元旭硝子)、応用セラミックス研究所の細野秀雄教授の研究グループは、ゴムのように伸び縮みする酸化物ガラスの作製に成功した。

ガラスがゴムになる、東工大がエントロピー弾性を示す酸化物ガラスを実現
異方性ガラスと等方性ガラスの構造モデル

複数種のアルカリ金属イオンを含有するメタリン酸塩ガラスが、ガラス転移温度で、ゴム状物質に特徴的なエントロピー弾性を示すことを見出し、実現した。エントロピー弾性とは、外力によって規則的に配列した分子が、エントロピー増大則に従って元の不規則な状態へ戻ろうとする性質。

研究グループは、柔軟な長い直鎖状分子からなる有機ゴムに類似した構造を有する酸化物ガラスを検討し、直鎖構造を持つ混合アルカリメタリン酸塩ガラス「Li0.25Na0.25K0.25Cs0.25PO3」を高温で引き伸ばし、直鎖を高度に配向させた後、加熱すると、エントロピー弾性に特徴的な吸熱を伴いながら、数十%もの巨大な収縮を生じて、元の無秩序な状態へ戻ることを確認した。

今後は、有機高分子のゴムでは対応できない高温下や酸化性環境などでの応用が望まれる。研究成果は12月1日発行の科学誌「Nature Materials」オンライン版に掲載された。