産業技術総合研究所(産総研)ナノチューブ応用研究センターとカーボン計測評価チームは、2種類の元素が交互に並んだ原子の鎖(原子鎖)を合成し、その原子レベルの物理特性を評価した。

カーボンナノチューブ内部の微細空間にヨウ化セシウム(CsI)を閉じ込め、陽イオンであるセシウムイオン(Cs+)と陰イオンであるヨウ素イオン(I-)が交互に一列に並んだ、イオン結晶性の CsI 原子鎖を合成した。

さらに、最新鋭の収差補正型電子顕微鏡で、陽イオンと陰イオンの動的挙動の違いなど、CsI 原子鎖に特有の新たな物理現象を発見した。

また、密度汎関数法を用いた理論計算から、この CsI 原子鎖は、三次元の CsI 結晶とは異なる光学特性を示すことが分かり、新しい光学デバイスへの応用が期待される。

なおこの研究成果は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業と、日本学術振興会科学研究費助成事業の一環として行われ、研究の詳細は、「Nature Materials」にオンライン掲載された。

産総研、原子の鎖を初めて合成
カーボンナノチューブに閉じ込めた CsI 原子鎖の
実際の電子顕微鏡像と模式図