■ユーザー回遊と集客構造

Web サイトの運営に携わるみなさんは、自社サイトで行っている集客施策が「誰の」「何に」「どう伝わって」「(ユーザーが)どういう状態になるためのものなのか」を明確に定義しておられるだろうか? 成果を獲得したいというのはもちろんとして、そこに至るユーザーの消費行動のプロセスに対し、施策がどういった作用をするのか、という目論見である。


これまでの掲載記事でも、図1を用い、繰り返し述べているが、ユーザーは Web 上で何かしらの有意義な情報、暇を潰せる情報を求めて回遊し、やがて発生する何かしらの課題の解決方法を探求している。
 
ユーザーの回遊を想定した集客施策のプランニング(前編)
(図1)

課題を持ったユーザーに対し、コンテンツの持つ魅力や広告施策で接しつつ、消費への転換点となるきっかけと判断基準を提供することで、ブランディングの促進や集客、そして成果の獲得につなげることができるのだが、ことオンラインの集客施策に関しては、図でいう最も右側に当たるユーザーに対して、自社サービスの利用決断をユーザーに促すコミュニケーション(赤い矢印部分)を中心に設計されることが多い。

代表的な広告が、リスティング広告などの運用型広告といえるのだが、そのコミュニケーションで成果に至らず離脱したユーザーは、そのまま自社サイトとのコミュニケーションも終了するかというと、そういうわけではない。決断ができずに競合サイトでも離脱しているユーザーがいる可能性があり、そういったユーザーが自社サイトに再訪問する可能性もある。自社サイトは、次回の消費への架け橋となり、ユーザーがブランドを想起するための認知獲得も担っているのだ。

今回の連載では、上記のように課題解決の途中で自社サイトを過ぎ去ったユーザー、そもそも課題などを持たない回遊ユーザーなどなど、あらゆるユーザーの情報ニーズに対して自社サイトの施策と「面」で接し、ユーザーの「知りたい」と「次なる課題」に応え、自社サイトブランドの認知と想起を育成する施策設計について考えてみたい。

■ファネル構造だけでは語りきれないユーザー行動

さて、掲載記事で頻繁に使用している図1は、いわゆる購買ファネル(パーチェスファネル)をアレンジした図だが、もちろんこの図だけでは表現できないコミュニケーション要素もたくさんある。

特にインターネット上のユーザー行動とその周期に対する戦略性は、図1だけで的確に表すことができない。ユーザーと自社サイトのオンラインコミュニケーションが、まるで勝負のように表現されてしまうからだ。
 
図2
(図2)

しかし、オンラインユーザーは、おそらく毎日 Web サイトで情報収集や新サービスをチェックするだろうと考えられるし、通勤通学時間の友となるスマートフォンのユーザーならなおさらだろう。一度の出会いで何も起こらなかったとしても、ユーザーの生活の中で再び自社サイトの施策に触れる機会がやってくる。そこで、図2のように、ユーザーの回遊行動を切り出して考えてみたい。

■検索行動とブックマークを中心にして切り出してみる

では、一般的に想定できる検索メディアとブックマーク回遊を中心に切り出してみよう。ユーザーは図3のように、ユーザー自身がブックマークしている Web サイト、そして利用シェアの高い検索メディアである Yahoo! 検索と Google 検索を中心に、日々ネットを回遊しているものと思われる。
 
図3
(図3)

次に、ここへ自社サイトと競合サイトを当てはめてみよう。図4のように、自社と同じ業態の中でトップシェアを誇り大きなブランド力を持つ競合サイトが存在し、ユーザーのブランド想起の中で高いシェアを維持していることが分かる。そしてユーザーの回遊動線上に市場での2番手、3番手、と続く。これらはネットマーケティング調査会社各社のデータを見れば構成が明らかになる。
 
図4
(図4)

そして、ユーザー自身に商品やサービスのニーズ、あるいは情報欲求が発生した時には、まず自分の「便利」と認知する Web サイトを目指すだろう。検索エンジンでそのサイトブランド名称を検索する、という行動もある。

問題は、その中で自社サイトがユーザー回遊導線上のどの位置づけにいるのか?ということになる。市場で一定の認知を得て回遊動線に組み込まれているのか、それともほとんど回遊されることがないのか。これらは Web 解析における直接訪問(※参照サイトの記録がない訪問、ただし全てが直接の訪問とは限らないので注意が必要)と、自社ブランド指名検索、その他商材関連キーワード検索によるユーザーの訪問の割合と構成によって、自社ブランドの認知度合いがある程度想定はできる。

■市場における自社サイトの位置づけの可視化

ただし、実際には、ネットマーケティングデータなどと照らしあわせて指標化して比較しないと、市場全体の中でどれだけのブランド力を得ているのか、Web 解析の数値だけでは正確に把握できない。手軽な調査方法として、キーワードアドバイスツールなどを用いて、競合を含めた各サイトのブランド指名キーワードの検索規模の比較、またそれら指名キーワードと商材関連検索キーワードの規模を比較するという手もある。
 
図5
(図5)

例えば、グルメ店舗情報サイトの市場のように(図5)、食に関連した情報や店舗名称の検索に加え、「まずはあのサイト『内』で検索」という特定のブランド想起が顕著なケースもある。

ただし、自社ブランド指名検索による訪問が少なくても、商材関連キーワードによる訪問が多ければ、SEO が成功しているとも捉えられる。Web サイト運営の収益性が確保されていれば、コストと工数のかかる検索結果の上位表示を無理に追いかける必要はない。

一方で、自社サイトへの流入を確保できていると考えていた商材関連キーワード群が、市場の検索規模から見ると実は小規模であったという可能性もある。その場合、競合のキーワード対策の状況によって、市場の伸びしろがまだまだ存在するとも考えられる。

ここで課題になるのは、商材関連キーワードでの訪問を勝ち得ていたとしても、それらのユーザーが再訪問してくれるのかどうか、ブックマークや自社のブランド指名検索に到達してくれるのかどうか、という点にある。
 
図6
(図6)

特に趣味性やユーザーの嗜好性が強い商材を扱う市場の場合、ユーザーが巡回し情報を求める Web サイトもある程度固定化され、検索キーワードの傾向も目的がはっきりとしたものが多くなる(ただしその市場に新規参入するユーザーは除く)。

図6の例ように、普段はブックマークした回遊先サイトで趣味の情報を収集し、ユーザーの声が聞きたいとなれば口コミサイトで情報を収集、個人ブログやプロによるレビューでより深い情報を引き出したい場合はコダワリのキーワードで広く検索し、その商品が欲しいと思った時は価格比較サイトで決断、といった回遊行動が考えられる。

■市場における理想的な立ち位置とは? 

これらオンライン上で想定されるユーザーの回遊行動の中で、どのモチベーションに対しても自社サイトが回遊の導線上にある、という状態が理想的といえる。その状態を目指す事こそが、オンライン上での自社サイトブランディングに他ならない。

図7で示すように、自社サイトがユーザー自ら回遊コースに入れたくなるような Web サイトでありたい。そのためには、ネット回遊上で常にユーザーの目にとまり、関連キーワードの検索で常に表示されるサイトであり、ユーザーの判断基準となる有益な情報を提供するサイトであり、消費が決断できる情報を提供するサイトであり、競合と比較したサービスの優位性が伝わり、信頼できるサイトであること。つまり、あらゆる面でユーザーの気持ちと対話できる Web サイトである状態を理想型として目指し、運営したいところだ。

図7
(図7)

「当たり前では?」と思われるかもしれないが、昨今注目されているコンテンツマーケティングにおいても、また広告運用やそのランディングページの設計においても、「誰の」「何に」「どう伝わって」「(ユーザーが)どういう状態になるためのものなのか」という施策の方針が、意外にも定義されていないケースが少なくない。方針や戦略の定義を軽視すると、集客施策がユーザーの何にどんな影響を与えたのかを分析することなく、成果件数だけで予算の配分や施策の良し悪しの判断を行ってしまい、結果的に自社ブランド認知の伸びしろを見落としてしまう。

施策がユーザーに与えた影響を Web 解析で可視化して次への施策に反映し、自社ブランド認知の余地を伸ばし続け、最終的には競合サイトの「相対的な」ユーザー想起(シェア)の弱まりを勝ち得たい。

ただし、さすがに市場のトップに君臨する競合サイトとの真っ向勝負は、サイト運営工数と予算の関係上、非常に難易度が高い。競合サイトの絶対的な差を埋めようとするのではなく、自社サイトがユーザーにとって「どのようなサイトなのか」、独自の立ち位置を定めることが必要だ。その方針を基に、コンテンツを見直すことでユーザーの回遊コースに組み入れるような価値ある状態を造り、広告による集客力を利用して自社サイトの認知の機会を広げつつブランド想起を育む、という視点で挑んでいただきたい。

次回は、これらユーザーの消費ステージと回遊行動に合わせ、施策のプランニングを全体で俯瞰しつつ詳細に解説したい。

執筆:株式会社アイレップ 嘱託 デジタルマーケティングプランナー 床尾一法
記事提供:アイレップ