光、水、空気などを高度に制御して野菜や花を育てる「植物工場」の数は、すでに国内で400か所近くにまで達している。この分野の業界団体である日本施設園芸協会(JGHA)が調査結果をまとめた。

日本の「植物工場」すでに400か所近くに、経営課題の把握も重要に
国内の植物工場の数(JGHAのレポートをもとに作成、参考値)

JGHA が三菱総合研究所に委託した調査のレポートによると、国内にある植物工場の数は2012年3月時点で210か所、2013年3月時点で304か所、2014年3月時点で383か所となっている。

レポートでは、毎年の調査で把握状況に差があるため、必ずしも時系列的に比較できない場合があると注意している。とはいえ数値上は拡大傾向にある。

■植物工場は大きく分けて3種類

レポートでは、調査対象の植物工場を次のように定義している。すなわち光、温度、湿度、水分、栄養などの環境を高度に制御し、植物を生産し、年間を通じて販売、提供しているシステム。苗等を生産している施設や、実験や展示、研究開発のために設置した施設は対象外だ。

さらに植物工場の種類を大きく3つに分けている。太陽光を使わない人工光型、太陽光と人工光の併用型、太陽光のみの利用型だ。

2014年3月時点では、太陽光のみ利用型が最も多く185か所、次いで人工光型が165か所、太陽光と人工光の併用型が33か所となる。

種類別に見た植物工場の数(出典:JGHA、参考値)
種類別に見た植物工場の数(出典:JGHA、参考値)

レポートでは、人工光型の代表例として「会津富士加工」などを挙げる。ここは機能性野菜に着目し、低カリウム野菜を量産している。カリウムの摂取を抑えることが重要な人工透析患者などの需要を狙って販売し、この分野で市場占有率を高めようとしている。また機能性野菜は、味や風味がほかと異なる場合があるため、通常の野菜が嫌いだという人がおいしく生野菜を食べられるといった副次的効果もあったという。

太陽光と人工光の併用型や太陽光のみの利用型の代表例としては「グランパファーム陸前高田」などを挙げる。東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市で復興支援として始まった施設。常に小売り側バイヤーなどと連絡したり、ユーザーからの要望を聞いたりし、同じ野菜を生産し続けるのではなく、季節や流行に合わせて生産品目を切り替えているという。

■経営課題の把握が必要に

一方でレポートは、植物工場の課題も指摘している。まずエネルギーコストと人件費の削減だ。

エネルギー面では、温度管理に地下水やヒートポンプを利用する案の検討が進み、試行例も出ている。人件費に関しては、製造業のような労務管理や TQM(総合的品質管理)に近い取り組み、機械を導入して自動化を図る試みが、一部で進んでいる。

また植物工場が増加するにつれ、独自性の確保、差異化が重要になる。すでに市場の需要を把握するためのマーケティングを行う努力や、需要の変化に応じて新たな設備投資を行おうとする意欲が見られるとのこと。

一部の植物工場はこうした経営上の課題を明確に理解しているが、何が課題かを十分に把握していないところもあるという。そうした工場では、事業計画を立てるためにも、自らの経営課題や生産上の技術的課題の洗い出しが重要だと、レポートでは指摘している。