インターネット上にあふれる音楽などの海賊版を「ロンダリング(洗浄)」して利用する方法が注目を集めている。米国 Apple が日本でも開始した音楽ロッカーサービス「iTunes Match」にそうした使い方ができるという話題がソーシャルメディアに広まった。

音楽など不正コピーを「ロンダリング」-- iTunes Match の広げる波紋
iTunes Match

■海賊版もアップロードできる iTunes Match

iTunes Match の国内登場が明らかになってすぐ、ブログ「hirausan」が「ロンダリング」の流れを検証している。

iTunes Match では、年額3,980円を支払うと、Apple のクラウドサービスに手持ちの楽曲をアップロードし、iPhone や PC などさまざまな環境で再生できる。さらに同じ楽曲を同社の「iTunes Store」が販売していた場合、それらを自由でダウンロードできる。

不正に入手した海賊版であっても正規版と同じくアップロードできるようだ。ただし、iTunes Match では楽曲の再生回数に応じて権利者には使用料が支払われる。つまりユーザーが海賊版をアップロードしたとしても、権利者に利益が生じる可能性がある。この点がソーシャルメディア上で話題を呼んだ。

■将来は電子コミックも洗浄できる?


ユーザーから海賊版を回収して権利者に利益をもたらそうとする取り組みは、以前に電子コミックの分野で、より意識的に試みられたことがある。

広告モデルの無料電子コミック配信サービス「J コミ」が2011年の正式公開に合わせて実施した「違法絶版マンガファイル浄化計画」は、出版社などの監視が及ばない絶版作品の海賊版をユーザーから回収し、広告付きで無料公開するなどして、その利益を権利者に渡すという内容だった。

J コミが過去に実施した取り組み
J コミが過去に実施した取り組み

この試みは実用というより問題提起の意味合いが強く、iTunes Match のような高度な自動処理やユーザーへのインセンティブを欠いている。 ただし将来の展望に関する1つの示唆ではあった。OCR や類似画像検索技術の精度が大きく向上したあかつきには、電子コミックの有料ロッカーサービスが海賊版対策になりうるかもしれない。