iPhone や iPad でより簡単に日本語の文章を書けるようになる。そんな期待を背負った文字入力システム(IME)「ATOK」の iOS 版が遠からず登場しそうだ。開発元のジャストシステムが公式サイトを立ち上げた。

iPhone 向け「ATOK」の公式サイトが登場 -- IME 戦争の先ぶれか
iOS 版 ATOK の公式サイト

ATOK は日本語の語彙(ごい)が豊富で、漢字かな変換の精度が高く、仕事で日々大量のメールや書類を扱うビジネスパーソンには人気が高い。すでに PC 版、Android 版はあるが、残念ながら iOS 版はまだない。米国 Apple が iOS に標準搭載した IME 以外は利用を認めてこなかったためだ。

しかし、Apple は今秋公開する最新版の「iOS 8」で従来の方針を転換。サードパーティ製の IME の利用を認めると発表した。ジャストシステムはこれを受け、iOS 版 ATOK の開発に名乗りを上げ、同製品のファンのあいだでも期待が高まっていた。

さて新たに立ち上がった公式サイトだが、まだ iOS 版 ATOK の発売時期や価格、仕様などの情報は一切載せていない。ただ「iOS 史上最高峰の日本語変換」といった文言が踊っている。ジャストシステムとしては、まずユーザーに対し、製品についてティザーで自信のほどを示したというところか。

先んじて存在感を示しておく意義はあるかもしれない。 ATOK は iOS 市場で幾つかの強敵を迎える見通しだ。ジャストシステムの創業者である浮川和宣、浮川初子の両氏が立ち上げた MetaMoji は、優れた手書き入力を武器とする IME「mazec」の iOS 版を開発すると表明している。

また iOS 8 が標準搭載する「QuickType keyboard」も注目だ。予測変換やユーザーの入力内容の自動学習など、今日の IME に求められる高度な機能を備えつつ、学習内容をクラウド上に送らずプライバシーを守るといった配慮がされている。

これに加え、 PC・Android 市場で ATOK とシェアを奪い合っている「Google 日本語入力」の iOS 版が出る可能性も気にかかるところ。同製品は Google の検索エンジンなどの技術を応用し、最新の流行語や専門用語を 辞書に反映できる機能で知られる。

iOS 8 やそれを搭載した新型 iPhone、iPad の発売は、これら IME 同士の新たな競争の始まりとなるかもしれない。iOS 版 ATOK の公式サイト立ち上げはその先ぶれとも受け取れる。