米国 Microsoft は5月20日、Surface Pro 3 を公開した。ノート PC の代替として利用できるというこのデバイスの価格は799ドルから。その重量は800グラムで、Microsoft は同デバイスが Apple の MacBook Air よりも軽量であることをアピールしている。

Microsoft は、Surface Pro 3 で Apple MacBook Air からノート PC 市場におけるシェアを奪いたいのだろう。だが実際には、Surface Pro 3 はノート PC の代替品にはならないし、タブレット市場で iPad からシェアを奪うこともない。

Surface Pro 3 はノート PC の代わりにはならない:そう考える10の理由

ここでは、ノート PC ユーザーが Surface Pro 3 に乗り換えることはないと考える10の理由を述べてみたい。

1. 価格が高すぎる

Surface Pro 3 の価格が799ドルからと聞いて、安いと感じた人は多いだろう。だが799ドルで買えるのは、Core i3 プロセッサが搭載されたデバイスなのだ。Surface Pro 3 の発表イベントでデモに使用されたデバイスが欲しければ、Core i7 の搭載された 1,949ドルのデバイスを購入しなければならない。

1. 価格が高すぎる

この金額を支払うのであれば、私なら MacBook Air と iPad Air を購入する。デバイスのスペックにもよるが、その方が安いからだ。

2. アクセサリの価格も高すぎる

Surface Pro 3 は本体価格も高いが、アクセサリも高価だ。Type Cover の価格は130ドルで、Surface Pen を追加購入すればその価格は50ドル。Surface Pro 3 を本格的なノート PC にするドッキングステーションは200ドルにもなる。

 2. アクセサリの価格も高すぎる

Surface Pro 3 でフルノート PC 体験を得ようと思えば、少なくとも2,000ドル以上はかかるということだ。Surface Pro 3 は、アクセサリも高すぎると言わざるを得ないだろう。ちなみに、Core i7 を搭載した MacBook Air の価格は1,249ドルからだ。

3. Surface Pro 3 は本当に企業利用に向いているのか?

Surface Pro 3 とそのアクセサリの価格を見る限り、企業ユーザーが Surface Pro 3 に手を出すとは思えない。IT 機器の購入予算はいまも非常に制限されており、Windows 7 が稼働するノート PC の買い替え時期を先送りにしてこれに対応しているところも多い。従業員が外出先で使用するコンピューティングデバイスとしては、500ドルから600ドルの安価なタブレットが購入されている。

3. Surface Pro 3 は本当に企業利用に向いているのか?

Surface Pro 3 を業務で利用する場合、アクセサリも含めれば2,000ドル程度の投資が必要となる。そして、その高価なマシン上で動作するのは、従業員がその使い方に慣れるのに時間を必要とする Windows 8.1 なのだ。企業がこれを購入したいと思う理由はどこにある?

4. では Surface Pro 3 を購入するのは一般消費者なのか?

Surface Pro 3 を一般消費者に売り込むのは、企業ユーザーに売り込む以上に困難だろう。

Microsoft は、一般消費者はノート PC とタブレットの両方を購入していると主張する。これはその通りだろう。そして、1台でその両方の目的に利用可能な Surface Pro 3 は、完全なソリューションだとしている。残念ながら、この主張は間違いだ。

一般消費者に人気のあるノート PC は500ドル以下、タブレットは400ドル以下のものが主流なのだ。ノート PC とタブレットの両方を購入しても、価格は900ドル程度に収まっている。

Surface Pro 3 の価格は中間グレードの「Core i5/128GB SSD/4GBメモリー」搭載モデルで999ドル、「Core i5/256GB SSD/8GBメモリー」搭載モデルで1,299ドルとなっている。この価格で、一般消費者にアピールするのは難しい。

5. 12インチ画面は小さすぎる

Surface Pro 3 の最大の問題はその画面サイズにある。Microsoft によれば、Surface Pro 3 に搭載された画面の解像度は非常に高く、そこに映し出される画像は本当に美しいという。これは、事実だ。

だが12インチは小さすぎる。特に、ゲームや映画を楽しむ目的でノート PC を購入している層には、小さすぎてまったくアピールしない。Surface Pro 3 と同じ金額を払えば、米国ではかなり大きな画面を持つノート PC が購入できるからだ。

 5. 12インチ画面は小さすぎる

Microsoft は、Surface Pro 3 は 13 インチの MacBoook Air とも競合できると主張している。だが、その戦略は自身を窮地に追い込むだけだ。そのことに、Microsoft 自身が気付いていないのも問題だ。

6. Surface Pro 3 はノート PC というよりはタブレット

Microsoft は Surface Pro 3 がノート PC の代替となると強調しているが、実態はタブレットだ。箱から取り出したときのルックスが完全にタブレットであることからもそれがわかる。ノート PC らしいルックスにするには、キックスタンドを立てるなど、利用者が変形させなければならない。Microsoft が何を言おうが、Surface Pro 3 の作りは、ノート PC のそれにはほど遠い。

6. Surface Pro 3 はノート PC というよりはタブレット

7. ハイブリッドデバイスは市場に既に多く出回っている

Microsft は、Surface Pro 3 は、ノート PC とタブレット間のギャップを埋めた、最初のデバイスだと主張している。だが実際には、そのようなデバイスはすでに多く販売されている。Lenovo Yoga や、Asus Transformer などがそれだ。

7. ハイブリッドデバイスは既に多く存在している

これらの製品は、ノート PC として利用するには Surface Pro 3 より実用的だ。本物のキーボードが付属しているため、仕事で使うにはずっと使いやすい。Surface Pro 3 は、これらの製品の代替品にはならない。

8. Windows 8.1 が搭載されている

Surface Pro 3 には、Windows 8.1 が搭載されている。利用者は、他の Windows 8.1 搭載製品を購入したときと同様、この OS に慣れるまでに時間がかかったり、業務利用するには不向きだったりといった、Windows 8.1 固有の問題に直面することになる。

8. Windows 8.1 が搭載されている

Windows 8.1 は、Windows 8 よりはましになってはいるが、それでもまだ使いづらい OS だ。そして Surface Pro 3 に搭載されているのは、この 8.1 なのだ。

9. Microsoft は調査結果を読み違えている?

ノート PC とタブレットの「ハイブリッド」製品に対する需要が本当にあるのか。これは、現時点では疑わしい。

Microsoft の調査によれば、iPad を保有している利用者の96%がノート PC も保有しているという。Microsft は Surface Pro 3 を購入すれば、ノート PC とタブレットの両方が一度に手に入ると主張する。だがノート PC とタブレットを両方保有している人は、本当に1台ですべてができるというソリューションを欲しているのだろうか? ノート PC とタブレットの両方を保有し、利用シーンによって使い分けた方が便利なのではないか?

9. Microsoft は調査結果を読み違えている?

タブレットやノート PC に関する市場調査の結果は、そのように分析するのが正しいように思える。なぜ Microsoft はこれを受け入れないのだろう?

10. Microsoft は Surface に対する明確な戦略を打ち出すべきだ


Microsoft のプレゼンテーションを見る限り、同社がこのデバイスにどうなって欲しいのか、理解するのは困難だ。

10. Microsoft は Surface に対する明確な戦略を打ち出すべきだ

Microsoft が初代 Surface を発表したとき、同社は Surface をタブレットだと主張していた。だが Surface Pro 3 のプレゼンでは、Surface Pro 3 はノート PC の代替だと主張している。これはわかりにくい。

Microsoft は顧客がモバイル製品購入で別のベンダーに関心を移してしまう前に、そのセールス戦略を立て直す必要があるだろう。

Don Reisinger
Don Reisinger は、フリーのコラムニスト。Ziff-Davis の Gearlog.com でのデビュー以降、Computerworld、InformationWeek などに数多くのコラムを寄稿してきた。現在は eWeek の他、CNET、LA Times でコラムを執筆している。