新型コロナ対策、

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、衛生用品の不足が懸念されるなか、あちこちの酒造会社が奇策といえる手を打ち始めた。「消毒や除菌目的に製造したものでないが、アルコール度数は消毒液と同等」。そんな新製品を次々生産している。あくまでお酒で、ドラッグストアや直営店、直販サイトなど多種多様な販路で販売する。

メイリの65%

酒造会社の高濃度エタノール
メイリの65%

江戸時代末期の安政年間に創業し、日本酒、梅酒などを製造する茨城県の明利酒類は、アルコール65%と一般的な消毒液と同等のウォッカ(スピリッツ)「メイリの65%」の生産を始めた。明利酒類の既存の製造ラインを利用し、より高アルコールかつ極力不純物のないものとして作った。


容量は360mlで、1本あたり販売価格は1,000円(消費税別、以下同じ)。明利酒類の直販サイトから購入でき、販売はケース単位。3本、6本、12本、20本という単位で、送料は通常、全国一律900円(ゆうパック)だが、12本以上は明利酒類が送料を負担する。また3本、6本注文の送料は200円引きとなる。

砺波野スピリッツ77

酒造会社の高濃度エタノール
砺波野スピリッツ77

江戸時代末期の文久年間に創業し、日本酒、ウィスキーなどを製造する富山県の若鶴酒造では、アルコール度数77%のスピリッツ「砺波野スピリッツ77」の生産を始める。

高濃度アルコールの需要の急激な高まりから、供給が逼迫(ひっぱく)している状況に対応するため。衛生的な酒造のボトリング設備を活用し、関連省庁と連携しながら、4月13日出荷に向けて準備を進める。所有するウイスキーの蒸留器「ZEMON(ゼモン)」を用いて高濃度アルコールを製造することも検討している。

アルコール度数は77%とこれまで発売された飲用可能なアルコールのなかでも最高に近い数字となる。サトウキビ原料のアルコールに加水し、ボトリングしている。

容量は300mlで希望小売価格は880円。1日に製造できる上限が決まっているため、週約1,000本の製造量となる。北陸を中心としたドラッグストア、医療機関、若鶴酒造直営店に優先的に供給する。さらに売り上げの一部は新型コロナウイルスの感染拡大防止にむけた取り組みに寄付する考え。

なお、あくまで酒として製造したため飲むことも可能。ただしアルコール77%の高濃度エタノールなため、急性アルコール中毒などの影響が考えられるため、飲用に適するアルコール濃度に希釈することを勧めるとしている。

アルコール77

酒造会社の高濃度エタノール
菊水酒造のアルコール77

江戸時代に創業し、日本酒や焼酎、リキュール、ラム酒などを製造する高知県の菊水酒造ではアルコール77%のスピリッツ「アルコール77」の製造を開始した。関係省庁の指導のもと、4月10日から出荷開始する。

2018年7月豪雨により甚大な被害を受けたが支援を受け立ち直ったいきさつがあり、今回は所有する製造設備等を活用して貢献する考え。希望小売価格は1本1,200円。

背景に厚生労働省の動き

一部の老舗酒造が新製品の製造を決めた背景には、厚生労働省の動きもある。厚労省は3月、医療機関向けに「新型コロナウイルス感染症の発生に伴う高濃度エタノール製品の使用について」と題した連絡を行った。

手指消毒用アルコールの供給が不足していることから、医療機関ではやむを得なければ高濃度エタノール製品を代替にしてさしつかえないとし、その場合は特定アルコール事業法に規定する事業者から購入し、さらに製品の確認と容器の清浄度に配慮することを求めている。エタノール濃度は原則70~83vol%の範囲で、メタノールなどを含んでいないことが条件。

また代替となる高濃度エタノールは医薬品医療機器等法に規定する医薬品または医薬部外品に該当せず、製造、販売について同法の規制を受けない。

なお、厚労省はこの対応は、新型コロナウイルス感染拡大を受けた臨時的、特例的なもので、今後の流行状況が変化すれば廃止する可能性もあると注意している。