稲井カオル「うたかたダイアログ 2」

稲井カオルさんによる「うたかたダイアログ 2」が1月19日に発売された。ドラッグストアでアルバイトをする高校生、宇多川さん(女性)と片野さん(男性)による日常を描いたコミック作品。

会話のセンスが抜群なのが特徴。単にギャグを並べているだけでなく、各話が立体的な構造を持っていて、冒頭に使われたギャグが後半でもう一度出てきて重要な役割を果たしたり、果たさなかったりしている。

例えば第9話では、雑貨店で“かわいいプレゼントを探す”シーンがある。シーン冒頭では宇多川さんから「片野さんが思うかわいいものって何?」という問いかけがあり、それに対し片野さんは「猫とパンケーキとマスキングテープ」と答える。そして「猫がパンケーキ食ってる柄のマスキングテープ」を店内で探そうとするのだ。そんなものがあるわけはないと思うが、シーンの後半では「猫がパンケーキ食ってるマスキングテープ」が本当に見つかってしまう。

実用的な一面も持っている。たとえば友だちと街を歩いていて会話が途切れたときに楽しめる“遊び”も見つけられる。

先の雑貨店では、二人が“見たことあるけど名前がわからないキッチングッズ”に勝手に名前を付けるシーンが登場する。例えばパスタをすくう「パスタレードル」を、宇多川さんは「パスタすくい棒」と名付ける。「ハニーディッパー」には「ハチミツすくい棒」、「ポテトマッシャー」は「おいも潰し棒」といった具合だ。

この“遊び”は、実際にやってみると案外楽しめる。もちろん、一緒に楽しむ友だちにセンスが必要だが。

さて、「うたかたダイアログ」は、“少女コミック”に分類される作品。だが少女コミックが苦手という人であっても、「お笑いライブが好き」「小劇場通いがやめられない」という人には楽しめるはずだ。また、「これから初対面の人に会う」という人にもピッタリだろう。作品の影響を受けて一時的に面白い人になれれば、初対面の相手から「センスの良い人だな」と思ってもらえる……かもしれない。

稲井カオルさんの作為品では「銀河系不動産ほしの」シリーズも面白い。会話のセンスに加え、1950年代の米国SFのテイストや、日本のSF作家である梶尾真治さんのリリシズムさえも感じられる傑作揃い。こちらもぜひ発売して欲しい。白泉社さん、お願いします。

稲井カオル「銀河系不動産ほしの」
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