ギャラクティカマグナム
ギャラクティカマグナム殺虫剤とは

「ギャラクティカマグナム殺虫剤」を知っているだろうか。インターネット上で広がった怪談に登場する。とある地下鉄で害虫を駆除していた業者が、殺虫剤をまき続けた結果、害虫がどんどん耐える力を増し、最も強い薬でもとどめをさせず、お手上げになる恐ろしい話だ。案外事実かもしれない。

東京都内某地下鉄における害虫駆除の話」としてTwitterの投稿をまとめたものが、キュレーションサービス「Togetter」で閲覧できる。匿名の人物が害虫の怖さを教える体験談として紹介したもの。具体的な固有名詞などは避けており、架空の話としても読める。


あらすじは地下鉄の害虫に苦戦する語り手の会社が、次々に強い殺虫剤をまくが、いちど駆除に成功したかに見えても、しばらくたつと元通りになる。とうとう「ギャラクティカマグナム殺虫剤」という仮の名で呼ぶ最も強い薬を投入するが、それさえ耐えるようになり、ほうほうのていで退散する、というもの。

まるでギレルモ・デルトロ監督が初期に撮影していたB級ホラー映画を思わせる展開だが、もしかしたら本当かもしれない。

そう思ってしまいそうな研究成果を最近、国の研究機関である産業技術総合研究所(産総研)が公開した。一部の害虫は実際、殺虫剤に「あっというまに」耐えられるようになる。こうした性質を殺虫剤抵抗性というが、カギになるのは「細菌」の存在だという。

産総研などの実験では、ポットに詰めた土壌に、世界中で使っている有機リン系の殺虫剤をわずか数回散布しただけで「殺虫剤を分解する細菌」が増殖したという。さらにダイズやアズキを荒らすカメムシの一種が細菌を体内に取り込み、共生するようになると、従来考えていたよりも急速に殺虫剤抵抗性が発達することが分かった。

カメムシなどのイメージ
(左)害虫のホソヘリカメムシ、(右)殺虫剤分解菌のコロニー

たった2回散布しただけで殺虫剤を分解する細菌と共生するカメムシが見つかり、6回散布したあとでは92%がこの細菌を持つようになった。

かつて殺虫剤抵抗性は、薬の影響に耐えた害虫が子孫を残し、自然淘汰により何世代もかけてゆっくり発達すると考えられていたが、細菌がからむともっと早く進む恐れがあると、あらためて示したかたちだ。

なお今回の産総研の成果は、殺虫剤抵抗性を持つ害虫の発生を未然に防ぐ技術の開発につながる可能性がある。詳細は近く英国の学術誌 The ISME Journal (Nature Publication Group)にオンライン掲載する予定。