ビワの種子のイメージ
ビワの種子(出典:農林水産省)

ビワの種子の粉末は「ガンに効果がある」などとしてインターネット上などで出回っているが、むしろ有毒物質を多く含む恐れがあるとして、農林水産省が食べないよう注意を呼びかけている。

よく熟したビワの「果肉」は美味で、安全に食べられる。しかし「種子」は天然の有害物質アミグダリンなどを多く含む。種子を単純に乾燥、粉末にしたものは、有害物質はほとんど分解せず残っている恐れがある。


ところがインターネット上などではアミグダリンを「ビタミンの一種」と称したり「ガンに効果がある」とうたったりする情報が流布している。過去にそういった説があったためだが、今日では世界各国の研究機関が否定しており、逆に健康への悪影響が考えられる。実際に海外では死亡例があり、ほかに悪心、嘔吐、頭痛、目まいなどさまざまな作用が起きる可能性もある。

以前から専門家の懸念が出ているにもかかわらず、日本はどこふく風とビワの種子の粉末をパック詰めし、そこかしこで販売中。最近になって東京都が行った買い上げ調査では、基準を超えるアミグダリンを含んだ商品がいくつも見つかり、それぞれ回収、返金といった措置が決まった。

ビワ種子粉末のイメージ

ただAmazon.co.jpや楽天市場、Yahoo!ショッピングといったショッピングサイトでは似たような商品が絶えない。「ジュース、ミルクなどに混ぜると小さな子供でもおいしく飲める」などと説明しているものさえある。

もっとも農水省は、ビワの種子粉末の販売を一律に止める立場にはないそう。まだ健康被害が多発している状況でもなく、まず危険を周知し、一般の人に自衛を勧める考えだ。

もうひとつ農水省が注意をうながしているのは、料理レシピの検索サイト。ビワの果実を食べたあとに残った種子を生かすレシピなどに気を付けてほしいとしている。料理による健康被害の報告はまだないが、やはり高濃度のアミグダリンなどを含んでいる恐れがあるためだ。

ちなみにレシピサイト大手の「クックパッド」を見ると、以前はビワの種子から作る杏仁豆腐から、手作りのビワ種子粉末までさまざまなレシピが並んでいたが、12月7日時点では多くが消えている。一方「楽天レシピ」などにはまだビワの種子の粉末を使ったパンケーキなどのレシピが並んでいる。

ビワの種子料理のイメージ

医療や健康について、ネット上ではあやしげな噂が目を引きやすく、最近になって検索大手のGoogleも、医療機関や専門家などの信頼できる説明を優先して表示するよう対策を急いでいる。

ただ今回のビワの種子粉末のように、もともと検索で上位にあらわれやすい大手レシピサイトやショッピングサイトにおかしな情報が並んでいると、解決するのも簡単ではない。