世界の台風は、地球温暖化が進むとその影響でより大きくなる。理化学研究所のスーパーコンピューター「京」によるシミュレーションでこんな結果があらわれた。海洋研究開発機構(JAMSTEC)と東京大学の研究だ。
地球全域の雲の生成、消滅を詳細に計算できる手法「NICAM」を「京」で実行し、のべ60年間分におよぶ気候の変化を予測した。
それによると、まず温暖化が進むと、地球全体で平均した台風の発生数は22.7%減る。一方で中心部分の気圧がより低く、最大風速が上がった「強い」台風の発生数は6.6%増え、台風に伴う降水量は11.8%増える。これらは従来の研究と一致する傾向だ。
続いて台風の大きさを図る目安となる「強風域」の半径を比較すると、温暖化時に10.9%拡大することが分かった。
台風の特徴的な雲である「壁雲」は、海面付近から上昇した水蒸気の凝結によって発達する。温暖化が進むと壁雲はいっそう高くなり、雲をかたちづくる領域が広がり、その過程で周囲の大気を暖めて気圧を下げ、風速を上げ、強風域を広げる可能性がある。
今回の研究は従来のような経験的な仮定を排して、地球温暖化による台風の活動を予測したもので、京やJAMSTECの「地球シミュレータ」といった設備があって初めてできたとしている。
ただし、まだシミュレーションには不確実性があり、それを減らしていくには、さまざまな条件を少しずつ変更してさらに多くのシミュレーションを実施する必要がある。ただ膨大な計算が必要になるため、現在設計中の京の後継となる次世代スーパーコンピューターの完成が望ましいとの見解も示している。