アルジャーノンに花束を
あの小説とは関係…ない?

京都大学は、ダウン症の出生前治療を可能にする新規化合物「アルジャーノン」を発見したと明らかにした。インターネット上ではその呼称から、著名SF小説「アルジャーノンに花束を」を連想する人が続出したが、特にちなんだものではない。

アルジャーノンは、小林亜希子医学研究科助教、萩原正敏同教授らによる研究グループが発見した。ダウン症のマウスが生まれる前に、母のマウスを通して投与してみたところ、大脳皮質の変化や学習行動の低下といった症状が改善した。

ダウン症は約1,000人に1人の確率で発生し、最も多い染色体異常と言われる。知的障害や先天性心疾患などさまざまな合併症を伴う。原因は特定の遺伝子の働きにより、生まれる前に「神経幹細胞」があまり増えず、脳構造の発達不全につながること。出生前診断も可能になっているが、根本的な治療法はまだない。

しかしアルジャーノンは、ダウン症を引き起こす遺伝子の働きを抑える特徴を持つため、治療法につながると期待がかかる。

アルジャーノンのイメージ
(出典:京都大学)

また神経幹細胞は、生まれる前だけでなく、大人になっても存在することから、今後は神経新生が関係しているとの示唆があるアルツハイマー病などやうつ症状、神経細胞が脱落するパーキンソン病、ハンチントン病、脊椎損傷などの疾患の治療にも役立つ可能性がある。

ちなみにアルジャーノンの名前の由来はALGERNON、Altered generation of neuron。

ニュースで名前を聞いた人の多くが、20世紀にダニエル・キイスが書いたSF小説「アルジャーノンに花束を」を連想した。知的障害を持つ青年が、脳手術を受けて知能が飛躍的に向上するが、最後にはもとに戻ってしまう、というあらすじで、一見すると「脳」にかかわるため関係があるようにも思える。

ただし京大によると、今回の発見にたずさわった研究者はアルジャーノンに花束をという作品を知っているが、「それにちなんだり、意識したりしたものではない」と説明している。