
「CERO One」は、日本の“ママチャリ”の概念を米国に持ち込む電動アシスト自転車。シマノ製のドライブユニットとバッテリーを搭載している。米国カリフォルニア州ロサンゼルスに本拠を置くCERO Bikesが開発した。


米国では、州や自治体によっても異なるが、多くの場合、学校への子どもの送り迎えは親の義務となっている。これは学校に限らず、友だちの家に遊びに行くときや、スイミングスクールなどの習い事にも当てはまる。
だが、最近の米国の都市部はどこも年々渋滞が激しくなっており、クルマで子どもを迎えに出かけて渋滞にはまり、決められた時刻に間に合わないということも。小学校では学校内に設置されたキッズプレイスなどに子どもを預かってもらえるケースもあるが、それにも時間制限があるし、料金も決して安くはない。
「CERO One」は、「日本の“ママチャリ”は、米国の今の交通状況にぴったりなのでは?」、というひらめきから生まれたもの。東京から米国に移住したCERO Bikesの創業者でありCEOであるIwaiさんの発案によるものだ。

最大の特徴は、モジュラータイプのカーゴシステム。ライフスタイルにあわせて、フロント&リアのラックに様々なバスケットを取り付けられる。リアラックには「イエップ マキシ」のチャイルドシートをアダプターなしで取り付けることも可能だ。

「CERO One」にチャイルドシートを取り付けて子どもを乗せれば、子どもを学校や各種スクールなどに送り届けることができる。習い事に行く場合、荷物もそれなりに多くなってしまうが、「CERO One」であればモーターが付いているので、子どもを乗せ、荷物を載せても走行することが可能だ。自転車であれば、渋滞にはまることがないので、予定した時刻に目的地に着くことができる。

リアラックに子どもを乗せた場合を配慮して、トップチューブは低めに設定された。フレーム等は全体的に低重心になるよう設計されている。また、子どもを乗せ降ろしする際に自転車が安定するよう、ダブルレッグのキックスタンドも搭載されている。

どれも、日本のママチャリでは当たり前の機能ですね
子どもを迎えに行くのは、お父さんの場合もあるし、お母さんの場合も。「CERO One」ではこの状況にも配慮して、154センチから193センチまでの身長に対応可能とした。

各種パーツには、シマノ製がふんだんに採用されている。前述のドライブユニット&バッテリーだけでなく、シフター、ディレーラー、クランク、カセット、フロント&リアハブ、そして前後ディスクブレーキにシマノ製パーツが採用された。


CERO Bikeは現在、クラウドファンディングサイトKickstarterで出資者募集のキャンペーンを実施している。目標としている調達額は5万ドル。このキャンペーンが成功すれば、米国でも日本のママチャリという概念が受け入れられたと言えるかもしれない。そしてそうなれば、子どもを後ろに乗せた自転車が街中を走るという日本ではおなじみの光景が、米国でも見られるようになるかもしれない。キャンペーンの行方がとても興味深い。

「CERO One」の米国での市販価格は3,399ドルになる予定。キャンペーンに成功した場合、出荷開始は2017年11月に予定されている。
「ママチャリに37万円も?」と思うかもしれないが、公共の交通機関の充実していない米国の都市ではこの金額でも需要はあると思われる。例えば、なんらかの事情で運転免許を停止されている人がいるからだ。
実際、筆者が米国で働いていたときも、運転免許を停止されたため、午後3時ごろになると一度仕事を抜けてバスで子どもを迎えに行き、ベビーシッターに子どもを預け、またバスで会社に戻る…という生活をしている知り合いがいた。ベビーシッター料金は月額で12万円程度。月によっては、給料の手取り額を上回るときもあったそうだ。
「CERO One」があれば、バスを待つムダな時間がなくなる分、ベビーシッターに子どもを預ける時間と料金を削減できる。子どもと一緒にいられる時間も増やせるかもしれない。37万円の初期投資は、比較的短期間で回収できると考えられる。

「CERO One」をカーゴバイクとして使用することも
さて、「CERO One」の日本での販売についてCERO BikesのCOOであるFelipe Dominguezさんに尋ねたところ、現時点ではその予定はないとの回答を得た。だがシマノはドライブユニットSTEPSを日本でリリース予定だそうで、そうなればCERO Bikesが日本市場に参入するチャンスを得られるかもしれないと、Dominguezさんは述べていた。

海外自転車メーカーの日本市場参入が楽になるかも?