米国エネルギー省のアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory、ANL)は、海水中に流出した石油を吸い取る「Oleo Sponge(オレオスポンジ)」という新素材を発表した。環境浄化の切り札になるかもしれない。
一時は価格下落とともに減産が進むかに思えた石油業界だが、技術の進歩によって採掘や精製のコストが低下。政治動向もからんで、大企業主導のもと再び設備投資と増産が進む可能性が高まってきた。
そうなると切っても切り離せないのが洋上プラットフォームやタンカー、港湾のそばにある貯蓄施設などの稼働状況。活発になればなるほど海水への影響もあらためて考えざるを得ない。化石燃料の歴史は汚染の歴史と表裏一体といえる。
今回、いわばエネルギー産業の本家本元といえる米国による対策の動きとして登場したのが、オレオスポンジ。海水に混じった石油をすばやく吸収できるだけでなく、簡単にしぼり出すことができ、再利用もしやすいのが特徴だとか。
家庭のクッションなどに使っているありふれたポリウレタンフォームを研究し、ナノテクノロジー(超微細技術)を使って、石油を吸い付ける特殊な分子層を付着させて実現したという。
ニュージャージー州にある試験場で、巨大な海水タンクにディーゼル油や原油を入れオレオスポンジを入れたところ見事に回収できたという。しかもオレオスポンジはきわめて丈夫で何十回、何百回も繰り返し石油を吸い取らせ、絞り出しても壊れなかったという。
船舶の往来でディーセル油や石油が蓄積しやすい港湾を普段から浄化する、といった目的に利用できる可能性があるそう。ちなみにこの研究は米国の沿岸警備隊や安全環境執行局が資金を提供している。