iPhoneそっくりのピストル「Ideal Conceal Pistol」
iPhoneそっくりのピストル「Ideal Conceal Pistol」

米国に住む筆者の友人の一人(日本人女性)は、護身用の銃を所有している。彼女は以前、中西部のある州に住んでいたときに暴漢に襲われ、前歯を折られるという経験をし、その後、銃保有のライセンスを取得した。

その友人から教えてもらったのが「Ideal Conceal Pistol」。これは折り畳むとiPhoneの形になる銃だ。昨年初めに発表されて以来、発売延期を繰り返してきたが、開発元は公式Facebookで「Ideal Conceal Pistol」を4月1日から生産開始し、2017年半ばには米国の店頭に並べる予定だと公表した。「Ideal Conceal」の開発が遅延した理由は、既存の銃に使用されている部品を流用できず、多くの部品を一から作っているためだそうだ。


「Ideal Conceal Pistol」は、護身用に開発された2連射可能な小型ピストル。折り畳み時にはスマートフォンに見えるようにデザインされている。ワンクリックでスマートフォン形状から銃へとトランスフォームし、射撃可能となる仕組みだ。

iPhoneそっくりのピストル「Ideal Conceal Pistol」
射撃時のスタイル

折り畳み時の外観はスマートフォンそのもの。これを見て、銃だと気が付く人は少ないだろう。「Ideal Conceal Pistol」を開発したIdeal ConcealのCEOであるKirk Kjellberg氏は、銃を銃だとわからないよう携帯する方法を模索した結果、スマートフォン形状にたどりついたとしている。



Kjellberg氏は、銃を携帯する免許を保有しているが、あるとき同氏の銃を見つけた子どもが大騒ぎをし、周囲からの注目を浴びて恥ずかしい思いをしたそうだ。

他の銃保有者がKjellberg氏のような恥ずかしい思いをしないで済むようにしたい。これが、 Kjellberg氏が「Ideal Conceal Pistol」の開発を思い立った理由だという。

iPhoneそっくりのピストル「Ideal Conceal Pistol」
いまや珍しくないスマートフォン
その形状に似た「Ideal Conceal Pistol」は
持っていても騒がれることはない?

とはいえ、スマートフォンにしか見えない「Ideal Conceal Pistol」の発売は、すべての人を喜ばせているわけではない。英国の日刊タブロイド紙The Sunは、欧州の警察当局は「Ideal Conceal」が犯罪者の手にわたることを警戒していると伝えている。

「テロに対する脅威の中、当局は国境規制に苦心しているが、Ideal Concealは(発売されれば)欧州の犯罪者の手に数日で渡ると考えられている」

いまや、スマートフォンは至るところに存在しており、目にしても驚く人はいない。「Ideal Conceal」がそのような“スマートフォンの森”に隠れる木になってしまうことを、当局は恐れているそうだ。

市販価格は450ドルとなる予定。米国ではiPhone 7の32GB版を購入するには649ドル、128GB版で749ドル、256GBで849ドル必要となるので、このiPhoneを模した銃は本物のiPhone 7よりも安く入手できることになる。

iPhoneそっくりのピストル「Ideal Conceal Pistol」
本物のiPhoneより安いのか…。

さて、冒頭の女性は、「Ideal Conceal Pistol」を購入する予定はないという。既存の銃のパーツを使用していない銃は、暴発などが恐ろしくて所持できないというのがその理由だ。数年すれば安定するかもしれないが、その頃までスマートフォンが存在しているとは思えないと、彼女は述べた。

「だって、私が学生の頃に使っていたベルもピッチも、もうないんだよ?あの頃は、永遠にあると思ってたけど」

そうだった。彼女は広瀬すずさん世代の「スマホと大人になっていく、多分初めての人類」ではなく、広末涼子さん世代の「ポケベルやPHSと大人になっていった、多分初めての人類」だった。

そして彼女の言うことはおそらく正しい。何年か先には、スマートフォンを持っている人は珍しい存在になってしまい、「Ideal Conceal Pistol」を所持していることは、一般的なピストルを所持するよりも目立つことになるだろう。

いまポケベルを所有している人が珍しい存在であるのと同じように。