
フォルクスワーゲンは北米国際自動車ショーでコンセプトカー「I.D. BUZZ」を公開。このクルマはフォルクスワーゲンブランドの原点と、電動モビリティの未来をつなぐものだ。

VWバスの正統な後継車?
このコンセプトカーでフォルクスワーゲンが表現するのは、電動モビリティのもつ多様な未来。電気自動車がCO2を排出しない、持続可能社会実現に向けて適した移動手段であることや、自動運転が“カーシェアリング”を含む様々な可能性を持っていることなどだ。

ハンドルを押し込むと、自動運転モードに
だが、多くの人が「I.D. BUZZ」に期待しているのは、かつてのフォルクスワーゲンバスの後継車になりうるかという点だろう。そのスペックを見ると、いくつかの点で「I.D. BUZZ」がフォルクスワーゲンバスのDNAを継承していることがわかる。
かつてのフォルクスワーゲンバスの特徴は、フラットなシャシーと、リアに配置された小型の水平対向4気筒エンジン。この組み合わせが、外から見るよりも広い室内空間を作り出していた。
コンセプトカー「I.D. BUZZ」の特徴は、フロア下にマウントされたバッテリーと、前後ホイールの側に配置されたモーター。この組み合わせは、低重心の安定したボディ構造を生み出すだけでなく、フォルクスワーゲンバス同様、外見よりも広い室内空間を実現している。そのホイールベースは、3,300ミリに設定された。


フォルクスワーゲンバスは、本来は商用向けの自動車だった。だが米国などでは1960年代に若い人たちの間で高い人気を獲得し、キャンパーに改造されるなどして、様々な目的に利用された。
「I.D. BUZZ」は、最初から豊富なシートアレンジを用意。改造しなくても、アウトドアを楽しむなど、マルチパーパスに利用可能になっている。


電気自動車であるにも関わらず、航続距離が長いのも「I.D. BUZZ」の特徴のひとつ。一回の充電で約430キロの連続走行が可能だ。これはガソリン車の航続距離にかなり近く、電気自動車でありながら、1960年代のフォルクスワーゲンバス同様、「どこへでも、どこまででも行ける」という感覚を搭乗者に与えてくれるだろう。

111kWhのバッテリーは、米国やドイツの大手自動車メーカーによる充電システム規格「Combined Charging System」に対応。30分で約80%の急速充電が可能だという。

エクステリアデザインは、フォルクスワーゲンバスの特徴を継承。特にその顔は、一目でフォルクスワーゲンバスの後継車であることがわかるものとなっている。

だがそのデザインは、単にかつてのレトロなデザインを取り入れただけのものではない。例えばヘッドライトは従来は丸形だったが、「I.D. BUZZ」では横に細長い形状とされた。これにより、夜間、ドライバーズシートからのクリアな視界を確保できるだけでなく、歩行者や他のクルマからの視認性も向上させているという。
「I.D. BUZZ」はコンセプトカー。発売時期や価格などは未だ発表されていない。だがフォルクスワーゲンは2020年にはまったく新しいアーキテクチャーを持つ電気自動車を発売し、2025年までには年間100万台以上の電気自動車を販売したいとしている。
なお、「I.D. BUZZ」という名前のうち、「I.D.」 は、「Identity(アイデンティティ)」「Idea(アイディア)」「Individual(個性)」「Intelligent(知性)」「Iconic Design(アイコニックデザイン)」などを意味するという。「BUZZ」は、「BUS(バス)」と「buzzing」からなる言葉遊びだそうだ。
