PNNLの発表した資料画像
夢の技術?

人間の排泄物から原油によく似たバイオ燃料を効率よく作れるという技術を、米国エネルギー省傘下のパシフィック・ノースウエスト国立研究所(PNNL)が発表し、インターネット上で話題になっている。

PNNLの技術は11月初旬に公開になったものだが、12月に入って米国のニュースサイト ArsTechnicaやNewsweekなどが相次いで取り上げ、あらためて注目の的になっている。


原油が生まれる地質条件を模倣


PNNLはこの技術によって「いたるところにある下水処理場がバイオ燃料を生産する施設になる可能性がある」と説明している。

核となるのは「水熱液化」という手法で、下水に高圧と高温をかけて変化させる。地球が原油を作り出した地質条件を模倣しつつ、自然環境のもとで数百万年かかる過程を、人為環境のもとでは数分で完了できるという。

できあがるのは地面から汲み上げた原油とよく似た物質で、ただし少量の水と酸素が混じっている。この物質は従来の石油精製と同じ流れで加工できるのが長所だ。

下水は従来、あまりにも水分が多いため、乾燥させるためにコストがかかりすぎ、バイオ燃料の素材には向かないとの評価があったが、PNNLの手法であれば乾燥が不要。農業廃棄物などからバイオ燃料を作る際にも役立つそう。

カナダで実用化へ

企業が発表した資料画像
Genifuelが公開している試作品の写真

PNNLは、ユタ州の企業のGenifuelにこの技術をライセンス供与している。Genifuelはカナダのメトロバンクーバー行政区の処理場で2017年にも必要な装置の設計、製造を行い、2018年に稼働を開始する計画だ。

ただ燃料を作り出せるだけでなく、ほかの化学製品も生産できるはずだと、PNNLは主張する。肥料に必要なリンなどだ。

こうした技術が期待したような成果や効率を得られるかどうかは分からないが、日本でも新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が下水汚泥から水素を回収する試みに力を入れているなど、排泄物から資源を手に入れようという考えは政府を惹きつけてやまないようだ。