蛍光を発する細胞のイメージ
新手法でDNAを導入したマウスの細胞(提供:大阪大学)

ヒトなどの生きた細胞に、別の遺伝子(DNA)を効率よく導入する手法を、大阪大学や情報通信研究機構(NICT)が開発した。ガンなどの遺伝子治療に役立つかもしれない。

NICT未来ICT研究所と大阪大学大学院生命機能研究科による成果。6月18日に国際的科学誌「FEBS Letters」のオンライン速報版に内容を掲載している。


生きた細胞にはもともと、侵入してきたウイルスなどの外敵を破壊し、身を守る力「オートファジー」がある。一方で遺伝子治療などでDNAを導入しようとする際は、この力が邪魔になる。

阪大とNICTは研究によって、この力のみなもとが細胞内のたんぱく質「p62」であると確認。p62を一時的に減少させ、つまりいったん細胞の身を守る力をそぐことで、DNAを効率よく導入する手法を編み出した。

すでにマウスの細胞やヒトのガン細胞で実験し、手法が有効かどうかを確かめている。

例えばマウスの細胞で、身を守る力をそいだものと、手を加えていない正常なものを比較。どちらにも蛍光を発するようになるDNAを導入したところ、身を守る力をそいだ細胞の方が高効率で成功した。

GFP遺伝子を導入する概念図
蛍光を発するたんぱく質「GFP」を作るDNAを導入してみる(出典:NICT)

正常な細胞とオートファジーをそいだ細胞の比較
p62を減らし、身を守る力をそいだ細胞の方がDNAの導入効率が高い(出典:NICT)

この手法は将来、ガンのみならず高血圧、糖尿病など特定の遺伝子治療に貢献すると、NICTや阪大は期待している。