
KADOKAWAとはてなが運営する新顔のインターネット小説サイト「カクヨム」で、初のWeb小説コンテストの結果が発表となった。ファンタジー部門の大賞は、槻影氏による「誰にでもできる影から助ける魔王討伐」。「異世界召喚もの」の作品だ。
コンテストは2015年12月に開始。ファンタジー、SF、ホラー、現代ドラマ、現代アクション、恋愛・ラブコメ、ミステリーの7ジャンルに合計5,788作品の応募があり、大賞7作品、特別賞19作品が決まった。
大賞作品は書籍として刊行予定。受賞したのは次の通り。
・ファンタジー部門
「誰にでもできる影から助ける魔王討伐」 著者:槻影
・SF部門
「横浜駅SF」著者:イスカリオテの湯葉
・ホラー部門
「僕の妹はバケモノです」著者:鹿角フェフ
・現代ドラマ部門
「ヒーローは眠らない」著者:伊丹央
・現代アクション部門
「勇者のクズ」著者:ロケット商会
・恋愛・ラブコメ部門
「平安時代にタイムスリップしたら紫式部になってしまったようです」著者:中臣悠月
・ミステリー部門
「うさぎ強盗には死んでもらう」著者:唐間ネロ
大賞のうち「誰にでもできる影から助ける魔王討伐」は、魔王の攻撃に遭った王国が、現代日本から勇者となる人物を召喚するというもの。主人公が勇者ではなく、その補佐役というところがひねっている。
ファンタジー部門の講評を担当したファミ通文庫編集部は「今現在ある意味メインストリームともいえるWEB媒体でのファンタジージャンルということで、エンターテイメントを意識した高いレベルの作品が多かった」と振り返る。
早い段階で読者を引き込む趣向を凝らした作品が多いなかでも、大賞作品は特に優れていたとする。
応募は「異世界もの」ばかりに非ず
主人公が現実からファンタジーへ入り込んで活躍する「異世界転生・召喚もの」は、もともと古株の人気ネット小説サイト「小説家になろう」などで安定した支持があり、書き手も多い。
新顔のサイトであるカクヨムのコンテストにも、こうした風潮が影響したのかと考え、KADOKAWAに問い合わせたところ、応募の傾向としては必ずしもそうではなかったという。
部門別にみると、ファンタジー、SF作品が多かったが、次いで恋愛ラブコメ、現代アクションも人気。ファンタジーにだけ集中した訳ではなかった。
またファンタジーの中でも異世界転生・召喚ものは大多数を占めておらず、かなり多様性のある題材が見られ、それぞれ存在感があった。今回のコンテストには、ネット小説に親しんだ層だけでなく、出版社の公募型の賞などに参加している層も、数多く作品を寄せたためではないかという。
しかし、そうした中でもファンタジー部門で「異世界召喚もの」が大賞を獲得した事実は興味深い。受賞候補の選考をした読者側の好み、ネット連載という形式で面白さを出せるよう洗練してきた文化や技巧など、色々な要素を考えさせられる。
なお、各作品は6月23日時点で、すべてカクヨムのコンテスト特設コーナーから読めるようになっている。