ゼンマイで動く腕時計。300万円する高級なもの。
ゼンマイで動く腕時計。300万円する高級なもの。

スイスH.Moser&Cie(モーザー)の新たな腕時計「Swiss Alp Watch(スイスアルプウォッチ)」はゼンマイ仕掛け。充電するかわり、りゅうずを巻いて使う。価格は300万円(税別)で、世界で50本しか売らない。要するにクラシックな機械式モデルだが、スマートウォッチにない利点が1つあるそう。

電子式の心臓を備え、機械式のように見える製品もあるが、モーザーはあえて反対のモデルを作ったとしている。さらにこの腕時計を「スマートウォッチへの挑戦状」とも述べている。


毎時1万8,000振動の手巻HMC 324 キャリバーと交換可能な脱進機を備えている。100%スイス製のマニュファクチュール製ムーブメントと、100時間以上のパワーリザーブが特徴。サンバースト仕上げを施したフュメダイヤルを採用し、先が細くなったビンテージ・ルックのラグに、緑のレザーライニングがついたクーズー革のストラップを組み合わせている。

主な機能としては、時間を見ることができる。

時間が見られる
時間が見られる

そのほかはというと「電話はかけられない」「最新のうわさ話を共有するメッセージを送ったりはできない」「2インチ画面で作成した美しいスケッチを送信したりはできない」「心拍数を共有することはできない」だそう。

残念ながら電話もメールも送れず、心拍数も測れない
残念ながら電話もメールも送れず、心拍数も測れない

ただし「アップデートする必要なく、いつの日か自分の子供たちに引き継ぐことができる」という。長持ちするデザインで、次世代に向けた装備が整っている、とうたう。ここでいう次世代というのは、新製品や新技術の話ではなく、人間のことだ。

300万円という値段や、世界で50本という数では、とうてい一般の人の手にはわたりそうもないし、スマートウォッチへの挑戦状というのは、半ばはスイスの腕時計ブランドの洒落(しゃれ)かもしれない。

しかしこの洒落を聞いてふと考えてしまうのは、スマートフォンやスマートウォッチに慣れた世代にとって、子どもや孫に残す愛用の品は、親世代より選択肢が狭まったのではないか、という可能性だ。カメラや腕時計や万年筆やレコードプレーヤーや、そういったものの話である。あるいは形見とか継承といった発想がもはや古臭いのかもしれないが。「いやいや、それは違う。我々にも残すものは沢山ある」というのであれば、今のうちに少し真剣に考えたいところだ。例えば、一体何があるだろうか。