海の向こうで始まった「Ice Bucket Challenge」は、とうとう日本でも拡大を始めた。ノーベル生理学・医学賞受賞者の山中伸弥教授が、たっぷりと氷水を浴びて見せたり、堀江貴文氏も挑戦を表明したりしており、今後国内の IT や科学分野でさらに多くの人が参加しそうだ。

ノーベル賞の山中教授も、ホリエモンも-- 「バケツで氷水かぶる」運動が日本でも急拡大
ためらいなく氷水を浴びる山中伸弥教授

山中伸弥教授の Ice Bucket Challenge

Ice Bucket Challenge は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病の治療方法研究を支援するための運動。神経の障害により、手足、のど、舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気で、英国の偉大な理論物理学者の Steven Hawking 氏が罹患していることでも知られる。

最近ソーシャルメディア上を席巻している運動は、ALS の治療研究に100ドルを寄付するか、氷水の入ったバケツを浴びるかを決め、そのようすを動画で撮影して、誰か別の3人を指名して、24時間以内に同じ選択肢のいずれかをとるよう迫る。なお、バケツを使用、3人を氏名、24時間以内に挑戦、といった条件は人によって厳密に守られている訳ではないが、 YouTube や Facebook を介して強い勢いで拡散している。

海外での参加者を見ると、Amazon.com 創業者の Jeff Bezos 氏や、Microsoft 創業者の Bill Gates 氏、Facebook 創業者の Mark Zuckerberg 氏、Google の創業者コンビ Larry Page と Sergey Brin の両氏、Apple の最高経営責任者(CEO)Tim Cook 氏など。IT 業界では挑戦していない著名人を探すのが難しいほどだ。

バケツで氷水を浴びる Zuckerburg 氏
バケツで氷水を浴びる Zuckerburg 氏

スポーツや芸能、政治の世界にも広がり、Barack Obama 大統領にいたっては、本人が100ドルの寄付を選んだにもかかわらず、氷水を浴びるようほかの著名人から繰り返し挑戦が突きつけられている。

科学の世界においても同様の盛り上がりを見せている。山中伸弥教授は氷水を浴びたあと、次に挑戦する相手として、古巣である米国カリフォルニア大学グラッドストーン研究所(Gladstone Institutes)で ALS などを研究する Steven Finkbeiner 教授、京都大学 iPS 細胞研究所(CiRA)で、ALS などを研究する井上治久教授を指名している。 なお、氷水を避ける場合は、100ドルの寄付ではなく、自らの研究によって貢献するよう求めている。

国際的なつながりを持つ日本の著名人によって Ice Bucket Challenge が国内に持ち込まれつつあるのも興味深い。いったん日本へと入った以上は、今後勢いよく拡散していく可能性がある。

起業家の堀江貴文氏は自らのブログで、さほどこの運動に興味がないとしながらも、ソーシャルゲームを手掛けるドリコム創業者である内藤裕紀氏から指名を受けたため挑戦に応じると表明した。積極的な賛同がなくても人間関係によって、運動に加わっていく「バイラル」の力を暗示するものといえる。

ところで多くの場合は経済的に富裕でもある著名人は、ばかなまねをするより素直に100ドルを払って終わりにすべきだという主張もあるが、実際には氷水を浴びたうえで、より多くの貢献をしていると見られる。また企業や大学、政府にとって権威の象徴でもある人々が稚気を見せる意外性が、運動に力を与えている面は無視できない。