このところクラウドの話が続いていたので、箸休め的にインフラエンジニアと人事採用の話をしてみたいと思います。弊社では新卒、あるいはインターンで大学生・大学院生・専門学校生を採用し、インフラエンジニアとして育てる方向で半年ほど進んできたのですが、これが実に難しいのです。弊社での傾向を分析しつつ、元大学人としての分析を重ねて今回はお話ししたいと思います。

弊社の求人票は「クラウド環境のオペレーションだけでなく、インターネット基盤技術に関する知識も修得することができます。基礎に関する授業を受講しているのであれば更に歓迎」という形で作成し、インターネットサービスの裏側に興味がある普通の学生もターゲットとした採用を行ってきました。

これまで学部生から博士まで幅広く面接を行ってきました。面接では必ず「インフラエンジニアというとどういうイメージをお持ちですか?」と聞くようにしているのですが、半数以上の学生が非常におもしろい答えを返してきます。インフラエンジニアに対するイマドキの大学生の考え方が見えてくるのでいくつか紹介してみましょう。

・SE は技術営業、インフラエンジニアは社内で開発する人
・プログラマ以外の何か
・企画部門
・データマイニング

Infrastructure という言葉の意味を最大限に解釈したユニークな答えに溢れます。そもそも募集要項を読もうよ、というのはこの際置いておきましょう。問題はインターネットサービスを支えるサーバやネットワークのお仕事が IT 系企業を志す一般の学生にはまず見えていないという現実です。

私が慶應 SFC に入学した IT 革命まっただ中の2000年当時、インターネットの父と呼ばれる村井純教授の研究室(ゼミ)には、文字通り何もしなくても学生が集まっていました。学期はじめには20人以上の履修者が新規で登録してきたものです。もちろん適正の不一致を感じて離れていく学生も相当数居ましたが、インターネットのルーティング、IPv6、TCP/IP など様々な基盤技術に進んで取り組んでいました。

この傾向が変わり始めたのは2004年頃でしょうか。2006年にはハッキリと自覚できるほど入室希望者が減り、このままではマズいと入室前の研究室説明会を定期的に開催し、何とか持ち直すことができました。この頃の象徴的な傾向として、インターネット基盤技術の入門授業にて「自宅のインターネットが何で繋がっているのか(光か DSL か CATV かなど)」「どこのプロバイダと契約しているか」などの質問に対し答えられない学生が増えてきたことがあります。物心ついた頃にはインターネットが当たり前だった常時接続世代の始まりです。

2006年より研究室で開催しはじめた「研究室紹介」は学生数の募集という観点からすると実を結んだものの、学生に自ら課題を探すよう求める方針では、インフラのような陰の立て役者よりもっと分かりやすい問題であるセキュリティ、それも暗号技術などではなくクラックからの防衛やクロスサイトスクリプティングへの志向が強くなっていきました。

常時接続世代以降の学生にとってのインターネットは空気のように当たり前のものです。常時接続以前の方々に説明するとすれば電気・ガス・水道と同じくらい当たり前の生活インフラだと言えるでしょう。電気は3.11で意識が高まったかも知れませんが、ガスや水道のなりたちや転送方法に対してどの程度興味を持ち、内容を知っていますかという質問と同じくらいインターネットのインフラに対する光の当たり方が弱いわけです。逆に言うとそうした生活インフラと同じくらい「安定していそうな就職先」としての大手 ISP に対する就職意欲がある学生というのは存在します。しかしこれが ISP ではなく、インターネットメディアサービスとなるとサービスを作るプログラマに対するイメージはあっても、インフラエンジニアという職業があることに意識が行く学生となると僅少ということなのです。

その一方で先日の勉強会で Omiai のインフラや AWS についてお話をさせて頂いたところ、インフラ担当ではない若手の方から「分からないことは多かったのですが面白そうな雰囲気が伝わってきました!」というお言葉をいくつか頂戴しました。業務内容を知れば興味を持ってくれる若手というのは居ます。また、弊社にご応募頂いた学生できちんとインフラエンジニアの仕事内容を話せた人は、ご両親や友人、先輩がサーバやネットワーク機器を操作する姿を見た人ばかりです。プログラマとして就職後にインフラを任されたところ興味を持つケースも耳にします。インフラエンジニアがという職種の存在と、魅力を伝える努力をすることが急務と言えるでしょう。

研究室への入部希望者が減り始めた2004年頃から、「インフラエンジニアを志す学生を増やすにはインフラエンジニアを題材にしたマンガが足りないのではないか」と冗談半分本気半分で周りに話していたりします。マンガ大国とは言え、無いものでしょうか。自分で考える範囲ではどう考えてもつまらなそうなのですが…。

執筆:株式会社ネットマーケティング 久松 剛
記事提供:株式会社ネットマーケティング