Apple CEO だった故 Steve Jobs 氏は2007年、あるカンファレンスで Microsoft の Bill Gates 氏を前に、「ポスト PC 時代(PC 後の時代)」について初めて語った。Jobs 氏が語ったところによれば、ポスト PC 時代とは、利用者のコンピューティングの中心が PC でなくなった時代のことだ。代わりに、モバイルデバイス、特定目的デバイスが中心となり、それらのデバイスは、従来の PC (パーソナルコンピューター)以上に「パーソナル」なものとなる。

Jobs 氏のこの発言は、この年リリースされた iPhone を念頭においてのものだった。iPhone の発売は、スマートフォン革命を引き起こし、Samsung、HTC、Motorola、そして Google の Android OS を時代の最先端へと押しだした。Apple は iPhone に続き iPad もリリースし、タブレット市場をも活性化させた。

スマートフォンやタブレットの登場が、PC 市場に大きな影響を与えたのは間違いない。PC の世界出荷台数は過去数期に渡り低迷を続け、ビジネスユーザーも一般消費者も、モバイルデバイスへと目を向けるようになっている。

だが、Jobs 氏は「ポスト PC 時代」が、PC 不要の時代と述べたわけではない。同氏は、ポスト PC 時代にも PC は存在し続けると述べていたのだ。

IDC の Bob O'Donnell 氏も、Jobs 氏と同じ意見を持つ人物だ。同氏は現在を、PC がタブレットやスマートフォンと共に利用される「PC プラス時代」だと定義している。仕事で PC だけを利用する人は確かに非常に少なくなっている。だが一方、タブレットやスマートフォンだけで仕事をしている人も、非常に少ないからだ。O'Donnell 氏は eWeek に対し、「PC プラス時代」を次のように説明した。

「市場を見れば、タブレットとスマートフォンの売上が急速に伸びているのがわかる。対して PC 市場は縮小を続けている。これを見れば、現在が PC 後の世界だと考えても不思議ではない。だが実際は、PC はまだ非常に重要なデバイスなのだ。問題は、利用者がモバイルデバイスへの支出を増やした結果、PC への支出が減少している点にある」

O'Donnell 氏は、PC の平均的な使用年数が従来の4年から5年に伸びた結果、PC の年間出荷台数が20%程度減少したのだと説明した。(同氏は PC 売上のほとんどは買い換えによるもので、新規に PC を購入するものは現在ではあまり多くはないと述べた。)

だが、PC が消えてしまうことはないと O'Donnell 氏は主張する。同社による米国の4,000人の消費者を対象にした調査では、調査対象者の97%が、主なコンピューティングデバイスは今でも PC であると回答したという。タブレットと回答したのは、3%に留まった。O'Donnell 氏は次のように説明する。

「タブレットは、PC を補完する役割を担っている」

現代は「ポスト PC 時代」ではなく「PC プラス時代」 ― IDC アナリストが語る
とはいうものの、PC が多くの問題に直面しているのも事実だ。Microsoft の Windows 8 もその問題の1つ。同 OS がインターフェイスを大きく変えたこと、スタートボタンをなくしたこと、タッチベースのシステム採用によりハードウェアコストが増加したことは、PC 市場の成長を手助けしている以上に、傷つけていると O'Donnell 氏は述べている。

O'Donnell 氏はまた、Windows 8 を巡る誤解も多く存在していることに触れた。例えば、一部の利用者はいまも Windows 8 の利用には、タッチスクリーンが必須だと考えているという。

Microsoft 幹部や同社のパートナーであるハードウェアベンダーは、Windows 8.1 のリリースが、Windows 8 を巡る問題や誤解を解消すると期待していると、 O'Donnell 氏は述べた。