米国 Google の日本法人グーグルは、東日本大震災の被災地のうち、特に今も大きな影響を受け続けている岩手県、宮城県、福島県の経済復興を支援する取り組み「イノベーション東北」を開始した。現地のコーディネーターと全国各地のパートナー企業、団体、サポーターをクラウド マッチングで引き合わせ、復興を支援していく。具体的には、Web サイトのほか Google+/Facebook/Twitter などのソーシャル チャネルで現地ニーズの紹介、サポーター募集を行うほか、対象地域で無料ビジネス支援ワークショップを開催し、「Google Apps for Business」の1年間無償提供を実施する。

Google が震災復興支援プロジェクト「イノベーション東北」開始、現地ニーズと支援をクラウドマッチング
イノベーション東北

活動3年目の3本目の柱

震災発生からこれまでグーグルは、迅速な災害情報を提供する「災害対応」と、震災で失われた思い出を取り戻す「デジタル アーカイブ」という“2本柱”の支援活動に取り組んできた。前者の例としては「Google 災害情報」や自治体と結んだ防災協定、後者はストリートビュー画像撮影や「未来へのキオク」といったものがある。

しかし、活動が3年目に入った現在、地域再建や経済復興への協力を求める声が多くなってきたという。具体的には、事業拡大/新サービスの認知度向上、全国に散らばった従業員と事業再開する際の連絡手段としてのインターネット活用を相談されたそうだ。

こうした変化を受け、“3本目”の柱となるイノベーション東北を開始することになった。グーグル執行役員でイノベーション東北プロジェクトチーム担当の藤井宏一郎氏は、この活動を「インターネットの力で東北のビジネスの復興を支援するプロジェクト」と説明している。

現地のニーズを理解した支援

イノベーション東北の支援活動は、現地コーディネーターが吸い上げた地元のニーズをサポーターの協力で対応する流れになる。ただし、事業を進めるうえでのニーズや必要とされる支援の内容は、地域や業務形態によって千差万別である。

支援の仕組み
支援の仕組み

グーグルのシニア マーケティング マネージャーでチームメンバーの根来香里氏は「活動のキーワードは現地のニーズをきちっと理解すること」と話す。「支援者側の『こういうことをしたいという気持ち』に応えるのでなく、現地で自分たちの力で立ち上がろうとしている人のニーズに則したサポートを行う」と述べ、あくまでも支援される側の視点を強調した。そして、現地コーディネーターとワークショップを、現地の状況を的確に把握してニーズを吸い上げる要と位置付ける。

そのうえで、コーディネーターとしては、現地に対する“想い”を持ち、地域に根付いており、チーム メンバーとして活動していける人を選びたいとした。必要な経費はグーグルが負担するなどして、活動環境を整える。

サポーターについては、グーグルがさまざまなチャンネルを通して募集し、広く集める。ただ、「経済目的で活動される方々は(プロジェクトの)目的にそぐわない」(藤井氏)とのことで、支援の気持ちを持ってボランティアでサポートしてもらいたいという。

そうはいっても、無料支援はサポーター側の負担が大きくなりかねないし、支援される側から「有償化/高額化してもいいので本格的により深くかかわってほしい」といった要求が出ることもある。グーグルは、将来的な展開のなかで有償の取り組みが発生することを否定せず、現地コーディネータにケースバイケースで柔軟にきめ細かく対応してもらう予定だ。根来氏も「最終的にはビジネス発展の実現がゴール」と述べた。

左:藤井宏一郎氏、右:根来香里氏
左:藤井宏一郎氏、右:根来香里氏

インターネットを使って足りない部分を手伝いたい

支援策の一つとして、グーグルは Google Apps for Business を1年間無償で提供する。これを利用可能なのは、岩手県、宮城県、福島県のいずれかに本拠地を持つ従業員数1,000人以下の企業/自治体/公共団体/認定 NPO。賛同パートナー(エム・エス・アイ、クルーシャルワークス、サテライトオフィス、ソフトバンクテレコム、電算システム、日本事務器)の協力を得て、導入や運用時のサポート、ヘルプ対応を行う。さらに、Google Apps に含まれない「AdWords」のようなサービスでも、ニーズがあるなら積極的に提供していく。また、ワークショップでも、現地のニーズに合うものであればグーグルのサービスに限定せず紹介するとした。

なお、同プロジェクトの記者発表会で投げかけられた、類似サービスを考えている地元企業の活動を妨げるのではないか、といった趣旨の質問に対し、藤井氏は「インターネットを使って(地元企業では対応できない)足りない部分を手伝いたい」と答えた。そして、現地の活動を阻害することがないようコーディネーターと一緒にやっていきたいとした。

なお、以前から Google はさまざまな方法で被災地の支援につながる活動を展開している。こうした活動についての主な関連記事は以下の通り。

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【その他】
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また、国立国会図書館(NDL)が、こうした Google などさまざまな組織による取り組みを収集/保存するポータル サイト「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(愛称:ひなぎく)」を運営している(関連記事)。