企業が生活者とコミュニケーションしていくには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。アメリカのウェブホスティングサービス企業、GoDaddy.com が、スーパーボウルで流した CM「Perfect Match」には、生活者の心を動かすストーリーがありました。

全米が注目するアメリカンフットボールの祭典スーパーボウル。2013年は2月3日にニューオリンズで開催されました。この TV 中継の CM 枠は世界一高額な放映料で知られており、30秒で380万ドルとも言われています。放送枠を獲得した各社は、この1度のオンエアのために、莫大な制作費を使ってアイデアのある、ひねった CM を制作することでも注目を集めています。そんな中、今年オンエアされたもので、一番注目を集めたのが GoDaddy.com のCM です。

内容は、スーパーモデル風の女性と、PC のキーボードをたたく技術オタク風青年が並んでいるところからはじまります。司会者が二人を「GoDaddy.com は2つの違った側面があります。“セクシー代表”としてバー・ラファエリ。スモールビジネス向けにキラー Web サイトを作る“スマート代表”としてウォルターに登場してもらいました。」として二人を紹介します。「そんな二人が出逢うとパーフェクト!」という言葉を合図に、二人は見つめ合い、キスをはじめます。カメラは二人の濃厚なキスシーンをひたすら映し出します。ただそれだけです。

この CM は、視聴者の評価点は最低でしたが、大きなバズ(口コミ)を呼びました。その結果、各メディアで取り上げられ、GoDaddy.com の各種サービス販売額は約40%増、合計で1万社を越える新規顧客を獲得したといいます。

ではなぜ、このキャンペーンはここまで効果があったのでしょう。そこに人間の感情を揺さぶるストーリーがあったからです。まずは、GoDaddy.com が自社の特徴だと発信していたセクシー&スマートという2つの側面を、スーパーモデルと技術オタク風青年というわかりやすい象徴で表現したこと。スーパーモデルはレオナルド・ディカプリオの元恋人でも知られるバー・ラファエリというのも話題性がありました。

次にひたすらキスをするという、人の官能を揺さぶる表現であったこと。人間は官能が揺さぶられると、そのドキドキが商品への興味と勘違いしてしまう傾向があるのです。さらに、テレビ局の考査に通らなかった自社サイトだけで見ることのできるより濃厚なキスシーンを映しているオリジナル CM の存在です。これはある意味、GoDaddy.com の確信犯的な取り組みで、わざと考査に通らないような CM を局に提出して、テレビではすこし表現を和らげたものをオンエアし、自社サイトではオリジナルの過激な CM を流すというもの。オンエアでも十分に刺激的でしたが、それ以上のものがあると知ると、人間はどうしてもそれをみたくなってしまう動物なのです。その結果、多くの人が GoDaddy.com のサイトを訪れ、結果として売り上げに繋がったのです。

GoDaddy.com はここ数年、毎年のように物議をかもしだすセクシーな CM をスーパーボウルでオンエアしています。社長自身も事前にブログで「考査ギリギリの CM をテレビ局に届けて返事を待っている」と書き、期待感をあおっています。そのようなバックストーリーも大きなバズを産み出した要因のひとつでしょう。広告業界には昔から「SEX SELLS(セックスは売れる)」という言い伝えがあります。これは前述したように広告表現のビジュアルにドキドキする感情と、商品への興味を混同してしまうからです。それが今でも通用するということを証明してしまいました。このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。あなたの会社のコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?

執筆:川上徹也

記事提供:株式会社ビデオリサーチインタラクティブ