2013年がいよいよ幕を開けた。2011年の東日本大震災以降、ますます多様化する消費者のインサイト、スマートフォン普及の加速、実名性ソーシャルメディアの大躍進。昨年ほぼ話題を独占した感のある「LINE」は、とうとう登録ユーザー数が1億人を突破した。なんとも躍動感のある中スタートする2013年だが、広告・PR、マーケティング、メディア業界において注目すべきキーワードはいったい何だろうか?今回のコラムはそれをテーマに、調査データも交えた僕の考えを話してみよう。

「宣伝会議」新年号に掲載された、「2013年注目しているマーケティングキーワード」の調査結果では、「2013年に注目している」「2013年に注力したい」キーワードともに、1位は「O to O(Onlime to Offline)」が選出された。2位が「戦略 PR」。次いで3位が「ターゲティング広告」、4位が「ソーシャルリスニング」と続く。

1位の「O to O」については、古くは「クリック・アンド・モルタル」(2000年に提唱されたので実に13年前!)の発想から続いている話であり、正直、「何をいまさら」という感がなくもない。ここからは私見だが、「O to O」がここで1位になる背景には、「さらなるネットとリアルの融合と拡張」という美しいイメージに加え、実は「業界全員の利害が一致する」ということがあるのではないかと思う。「O to O」という考え方は、これまでの「ネットかリアルか」「既存メディアかニューメディアか」「EC 直販かリアル流通重視か」といった、一連の二元論を凌駕する。要は、業界みんなにとって「気持ちいい」話なわけだ。いかにも日本的と言えなくもないが、この1位は、「注目している!」というよりは、「一票いれとこ…」というニュアンスに近いような気がしてしまう。もちろん、今後より具現化すべきだということに疑いはないのだが。

そして2位の「戦略 PR」。こちらも正直、意外な結果だった。僕が「戦略 PR」の方法論を、「空気づくり」と称して、書籍の発刊を機に提唱し始めたのが2009年の1月。実に4年前である。「戦略 PR ブーム」などと呼ばれ、いっときの流行のように認識されたときもあった。この4年で多くの企業が導入し成果を検証し、結果的に「定着」することを僕たちは支援してきた。そういう立場としては、これも同様に「なにをいまさら」という気分になってしまう。しかしながら、いまだに注目・注力したいキーワードの筆頭であるということは、成果の手ごたえを感じた企業がいること、そしてまだまだチャレンジしようとしている企業も多いことを示唆している。そう考えれば、これからも大きな可能性を秘めていると思う。

さて、ここで戦略 PR 会社の代表としては、「今年もメシが食える」とホッとしてもよいのかもしれないが、これから起こるマーケティングの変革はそんな甘いものじゃない。実は僕が個人的に注目したいのは、上記の1〜4位のキーワードのどれでもない。それは「注力したい」で5位、「注目している」で8位となかなか渋い位置をキープしているワード、「マーケティング投資配分最適化」だ。2013年から本格化していくだろうという感覚をもっているのは、新しいソーシャルメディアの躍進や、戦略 PR の定着や、スマートフォンの普及という「現象」ではないと思っている。むしろ注目すべきは、ではなぜそういった現象がここ数年で起こってきたのか、ということだ。その本質を突き詰めていくと、これは(特に日本という国に特異なのだが)、マーケティングにおける非効率がどんどん排除され、効率面において飛躍的に進化するということだ。それも投下予算、インサイト調査、ターゲットリーチ、拡散力――あらゆる側面においてだ。われわれマーケティングや広告 PR に携わる人間は、その本質こそに注目しなければならない。

6年前の2006年にブルーカレントという戦略 PR 会社を設立したのも、「戦略 PRがそのうち流行るだろうから、今のうちに会社をつくろう」ではなく、「マーケティング投資が最適化されるにつれ出現するマーケットが戦略PRだから」というのが、より正確な想いだった。つまり、戦略 PR への注目は、「ひとつの結果論」に過ぎないということだ。ではその「マーケティング投資配分最適化」は、いったいどう進行させていくべきか、ということになるが、ここをもう少し因数分解していくと、(1)「正確なインサイト把握」、それをベースにしたコアとなる(2)「クリエイティビティ」、そしてそれを具現化させる(3)「メディアニュートラルなプラン(トリプルメディアや PESO と呼ばれる領域)」となるだろう。事業会社としては、この構造からブレないこと、またエージェンシーなどの支援会社はこの構造のいずれか(あるいはすべて)に高い専門性を発揮すること、につきるだろう。ここについては次回のコラムでもう少し掘り下げてみたい。

こうしたパラダイムシフトはグローバルに進みつつある。世界的なエージェンシーグループでも、従事する社員の意識、クライアントへのサービス体系など、大きく構造変革を推進している。僕たちが属するオム二コムグループのフライシュマンヒラードでも、大きなサービス体系をグローバルに再構築中であり、それは大きく Navigate(インサイトの探索)、Ideate(コアアイデアの創出)、Activate(具現化と活性化)という流れで示されている。2013年は、次の10年あるいは30年を前提にした、本質的なパラダイムの変革が始まる年になるだろう。

執筆:本田哲也

記事提供:株式会社ビデオリサーチインタラクティブ