昨年11月、米 Bloomberg LP、ボランティア活動を促進する National Conference on Citizenship と Points of Light が、米国でコミュニティに根ざした社会貢献活動を行う企業ランキング「The Civic 50」を発表した。この調査は S&P 500社を対象に、地域コミュニティに存在する様々な社会課題を解決し、コミュニティを活性化するために、時間や専門性、技術など、企業が保有する各種資産を投じた企業をランキング形式で評価したものだ。

評価基準は、リーダーシップ、効果測定と戦略、デザイン、社員の市民としての成長度、コミュニティ・パートナーシップ、コーズとの整合性、透明性の7つ。今回が栄えある1回目であるが、IBM がみごと1位に輝いた(2位は Citigroup、3位は AT&T)。

「The Civic 50」にランキングされた企業の特徴としては、まず、社会貢献活動が本業のコア・コンピテンシーと一致している点が挙げられる。IBM では、昨年43万人の社員が合計320万時間をボランティアに投じているが、ニューヨーク州ブルックリンに「P-Tech」と呼ばれる公立高校を設立し、コンピューターサイエンスの分野の準学士号を付与するなど、コア・コンピテンシーを活かすような社会貢献活動を行っている。別の言い方をすると、本業との整合性と言ってもいいだろう。本業の売上(利益)増による株主の満足度向上、地域コミュニティにおける雇用の拡大、行政における税収増加、従業員の自尊心向上、就職希望の学生増加など、社会貢献活動の成果が本業の売上(利益)増に結びついていればいるほど、企業を取り巻く様々なステークホルダーからの支持を得られやすく、継続しやすいといえる。

2つ目が、社員が社会貢献活動に参加できるように社内制度として仕組み化していることだ。IBM では、「Corporate Service Corps」という、コミュニティサービス・プログラムを展開している。設立から5年が経過しているが、十数人からなるボランティアが、既に200チーム以上活動している。このプログラムの活動には、例えば、ケニアの郵便サービスを近代化する事業やインドでのオンライン教育プログラムの立上げなどがある。社内制度を持つということは、それに携わる人員体制や予算を確保しなければならない。そして、企業の場合、一般的に一度始めた取り組みをそう簡単には止めることはできないため、ある程度の期間に渡ってコミットするという、それ相応の覚悟を表明することになるわけだ。

3つ目が、社会貢献活動の中に自社の「人づくり」という視点を盛り込んでいるという点だ。前述の IBM の「Corporate Service Corps」に関する社内調査結果によると、このプログラムへの参加社員は、本業の仕事ぶりやスキルが改善されたり、同社でキャリアを形成していく意欲が強くなるなど、雇用主にとっても喜ばしい結果に繋がっているようだ。

企業にとって、CSR における“実”というと、マーケティング的な側面がクローズアップされ、本業との関係性において、「儲かる CSR」という表現を目にする機会が増えてきた。ブランディング強化や売上(利益)に直結するという意味では非常に分かりやすい指標であるが、あらためて言うまでもなく、これらのベースになっているのが社員のエンパワーメントだ。

今後は、社員個々人の専門性やリーダーシップの育成、自己啓発やキャリア形成という企業人事部の観点からも、CSR の位置づけを見直す必要がある。数年前まで、取り組む企業は数えるほどしかなかった CSR であるが、単なる慈善活動ではなく、ブランディング、プロモーション、新規ビジネス創出、人材育成など、企業経営の様々な分野と密接にかかわっていることを理解しなければならない。

このコラムで紹介した3点を実践しているかどうかが、今後の CSR に必要な視点であり、その企業が本気で CSR に取り組んでいるかどうかの判断材料になろう。

執筆:長浜洋二

記事提供:株式会社ビデオリサーチインタラクティブ