今年は日本企業の間で、オンラインのアニュアルリポート(AR)の作成が目立った。2007年以後、コングロマリット世界有数のゼネラル・エレクトリックや飲料大手ペプシコなどをはじめ多くの米企業が先行したオンライン AR の動きの大波が目に見えてきたわけである。

オンライン AR は、ビデオ動画はもちろん、カーソルひとつで音声が聞こえるオーディオ機能、財務関連の数値やチャートの作成、ダウンロード可能なエクセルも掲載できる。しかも XBRL での作成もできるし、多言語の表記も可能だ。ウェブだからサイトに掲載する情報更新もたやすい。フォーマットも自在に作成し、もちろん重要なページを可視化する編集も可能で、IR 現場ではデジタル編集の力量が問われる。例えばソニーのオンライン AR だ。掲載された最高経営責任者(CEO)や研究開発の担当者が語りかけるビデオ動画の圧倒的な訴求力は、写真と文章のコンテンツを時代遅れのものに見せてしまう。

米企業の場合、2007年7月に証券取引委員会(SEC)が「通知とアクセス」規則を採択した(施行は2009年1月)ことで、オンライン AR が一気に広がった。それまで株主に文書で届けていた総会資料を自社のウェブサイトに掲載し、別途、株主にはウェブサイト上で閲覧できるとの通知を郵送すればよいことになった。郵送や印刷に回っていたコストがオンライン AR の作成の原資となっているのだ。

そんな米企業の IR 現場が頼りにするのは、米ウェブ・デザインのニーナ・アイスマン(本社ニューヨーク)が作成した手引書の「オンライン AR・ベストプラクティス」(2011年)だ。ウェブサイトに掲載されるオンライン AR。それだけにアイスマンの「ベストプラクティス」も「見つけやすい」から始まり、冒頭は「自社サイトのトップページでオンライン AR の掲載がすぐ分かるようにする」で、続けて「IR サイトのトップページでも、すぐ分かるようにする」とある。というのも、オンライン AR がサイト画面の一部に掲載されていると、他のコンテンツに埋没して、見逃すことが少なくないからだ。できれば、オンライン AR 向けに別タブ(=マイクロサイト)を用意したい。別タブなら他のコンテンツと混同することもない。ベストガイドラインも、作成にあたって、まず「サイト画面の一部か、別タブか」を判断することだと語る。

オンライン AR によくある「ビデオ動画」のアップロードはカンタンだし、最高経営責任者(CEO)のウェルカム・ビデオや自研究&開発(R&D)担当者のコメントが語られると、そのコーポレートスト―リーは臨場感にあふれるイキイキした印象を与える。もちろん動画ソフトはあらかじめインストールし、ビデオ動画が取り上げたテーマと関連するサイト内のリンクも用意する。

ベストプラクティスは「ソーシャルメディア」も取り上げた。オンライン AR をソーシャルネットワークでカンタンにシェアできるように、Facebook、Twitter、E メールなどのアイコンを用意するように、というのだ。

プリント版と大きく違うのは「グラフィック」だろう。プリント版の AR でフルカラーのグラフィックは大きな比重を占め、掲載情報に訴求力とスタイルをもたらしてきたが、オンライン AR では、大判のフルカラー・グラフィックは控えるように、とアドバイスする。1ページから読み進む印刷版の AR とは異なり、コンテンツはサイトのあちこちに配置されている。そのため、AR の全体が分かる構成にしなければ、ちょっと戸惑ってしまいかねない。どんなコンテンツがあるのか、またその全体が目に見えるようにするべし、とした。

このほかにも、「ナビゲーション」や「ダウンロード」も取り上げているが、オンライン AR は、何であれ情報でもまずウェブを考える「生まれつきのウェブ世代」を頭に入れ、AR をオンライン版で考えるなら、ウェブでできるすべての可能性に注力するよう求めている。

なるほど、「オンライン AR・ベストプラクティス」というだけの内容だ。

執筆:米山徹幸

記事提供:株式会社ビデオリサーチインタラクティブ