1960年代初頭、マクドナルドは米国であるマーケティング戦略の展開を開始した。それは、顧客がまだ子どものうちに、自社ブランドのファンにしてしまうことを狙ったものだった。

マクドナルドは、子ども達に「マクドナルド」ブランドを浸透・定着させるため、1960年初期から同社のキャラクターとして「ドナルド・マクドナルド」を採用した。これは当時、マーケティングに革命を起こすものとなった。この戦略の結果、現在では「ドナルド・マクドナルド」は、米国の子どもたちの間で2番目に認知度の高いキャラクターとなっている。ちなみに1位は「サンタクロース」だ。

また、マクドナルドは、1970年代には子ども向けの「ハッピーセット」の提供を開始。80年代には店内でのプレイグラウンドの提供まで開始した。マクドナルドは教育現場にも進出。マクドナルドブランドの数学、読解、体育の授業や、奨学金プログラムに出資している。

こういった活動の結果、マクドナルドの「ドナルド・マクドナルド」戦略は成功を収め、同社は歴史上最大のフードチェーン店となった。現在、マクドナルドは1日に6,800万人の顧客にハンバーガーを提供している。

そしてマクドナルドのこの戦略を、IT 業界も模倣し始めている。

Amazon による「ドナルド・マクドナルド」戦略

米国 Amazon は12月5日、米国で「Kindle FreeTime Unlimited」と呼ばれるサービスを発表した。これは子どもがダウンロードしたコンテンツのコストのほぼすべてを、Amazon が肩代わりするというものだ。

「Kindle Fire」または「Kindle Fire HD」を所有する大人がこのサービスにサインアップした場合、その子どもは書籍、ゲーム、アプリ、映画、TV 番組を無制限にダウンロード可能となる。

費用は、Amazon Prime 会員では月額わずか2.99ドル。Prime 会員で無い場合でも月額4.99ドルだ。そして最初のひと月は無料なのだ。

Amazon と Apple の「ドナルド・マクドナルド」戦略
Kindle FreeTime Unlimited

このサービスでは、子どもが子ども向けの安全なコンテンツにのみアクセス可能というのも重要なポイントだろう。子どもは、サンドボックス内で自由に好みのコンテンツを探し、選択することができる。大人に押し付けられるのではなく、自分で選べるという点が Amazon ブランドに対する好感度を高めていく。そしてこれは、親にとっても安心なサービスとなる。

Amazon がこのサービスを提供するにあたり、どれだけのコストをかけているのかはわからない。だが、相当の金額を失っていることだけは確かだ。それでも、Amazon はこの戦略を選んだ。これが、20年後も Amazon に忠実な顧客を生むとわかっているからだ。

Apple による「ドナルド・マクドナルド」戦略

子どもたちを対象としたマーケティング戦略を展開しているのは Amazon だけではない。Apple も何年も前から実践している。しかも、その手法はとても巧妙なものだ。

Apple の400近い直営店の多くでは、子ども向けのテーブルを用意している。そこでは子ども達が iPad で遊び、Apple ブランドに対する親しみを深めている。

米国 Apple ストアのキッズ用テーブル
米国 Apple ストアのキッズ用テーブル

Apple による「ドナルド・マクドナルド」戦略はすでに効果をあげているようだ。Nielsen による最新の調査によれば、調査対象となった子ども達のうちおよそ半数が iPad を、36%が iPad mini や iPod touch を半年以内に購入したいと考えているという。iPhone を購入したいという子供も33%存在している。

米国の6〜12歳の子どもに対する調査「今後6か月で買いたいと思うもの」
米国の6〜12歳の子どもに対する調査「今後6か月で買いたいもの」
(出典:Nielsen)

Apple は最近、教育および出版に関する新戦略を打ち出した。これもまた、子ども達をターゲットとしたマーケティング戦略の一環だ。

Apple は以前から iPad を教科書として世界中の学校に売り込もうとしてきた。Apple は教育機関に対しては低価格でのハードウェア販売を実施している。

Apple による新戦略の柱となっているのは、Apple が最近アップデートした iBooks Author。これは電子書籍作成出版ツールで、特に教師と生徒に向けて開発されたものだ。

Apple は小学校6年生でもレポートが書けるように、そして教師たちが授業で使用する教材を作成できるように iBooks Author を開発した。

その戦略は明白だ。iPad の高い人気を利用し、教育分野で iBooks Author という新しいブランドを確立する。そして、書籍やマルチメディアコンテンツの作成と消費で iBooks Author が将来にわたって利用されることを狙っている。

ハイテク業界でも「ドナルド・マクドナルド」戦略は通用するのか?

私は Amazon と Apple による子ども向けのマーケティング戦略は、将来的には大きな利益を生むものになると見ている。あるプラットフォームを使い慣れてしまったら、別のプラットフォームに移行するのは困難だ。移行には、よほど強い特別なモチベーションが必要になるだろう。若いうちからある特定のプラットフォームを愛好する利用者を獲得できたとしたら、その利用者は生涯を通じての忠実な顧客となる。

「ドナルド・マクドナルド」戦略を取る企業は今後増加していくだろう。私は、Microsoft や Google も若い顧客をターゲットとした戦略を打ち出すと見ている。

歌手のホイットニー・ヒューストンは、ヒット曲「Greatest Love Of All(グレイテスト・ラヴ・オブ・オール)」で「子どもたちは私たちの未来 私はそう信じている」と歌った。Amazon と Apple もそう信じているだろう。子どもたちこそが、自分たちの未来であると。

Google と Apple は、なぜ敵同士になってしまったのか
Mike Elgan は、Elgan Media の CEO。internet.com の他、Computerworld、Cult of Mac などの IT 関連メディアに寄稿している。