インターネットをつうじて不特定多数の人から、比較的少額の資金を調達する「クラウドファンディング」。米国ではじまった仕組みで、2008年にスタートした Kickstarter(キックスターター)や Indiegogo(インディゴーゴー)などのプラットフォームが知られている。さらに米国では今年4月、起業家を支援する JOBS 法(Jumpstart Our Business Startups)も成立し、新興企業向けのクラウドファンディングによる資金調達に道が開かれ、その価値や役割が社会的にも再認識されている。

クラウドファンディングでは、映画の制作、ゲームソフトの開発、ミュージシャンの支援、演劇の上演、災害支援、教育関連のプロジェクトなど、クリエイティブ/アート系のプロジェクトを目にする機会が多い。興味深いのが、このクリエイティブの中に、フィランソロピー(慈善)に関わる分野における社会貢献プロジェクトが数多く含まれていることだ。広い意味で社会をクリエイト(創造/変革)することをミッションに掲げている NPO や NGO の活動やプロジェクトが注目を集めているのも、偶然というわけではないだろう。

日本でも、クラウドファンディング元年ともいえる2011年以降、READYFOR?(レディフォー)や MotionGallery(モーションギャラリー)、CAMPFIRE(キャンプファイヤー)などのクラウドファンディング・プラットフォームが次々と立ち上げられている。なかでも、READYFOR? では、こうした NPO や NGO 向けの社会貢献プロジェクトが多く展開されている。

例えば、カンボジアやタイなどの東南アジア諸国を中心に図書館建設や絵本を届ける活動などの教育・文化支援活動を行う、公益社団法人シャンティ国際ボランティア会が実施した、「陸前高田市の空っぽの図書室を本でいっぱいにしようプロジェクト」では、200万円の資金を集めるという目標に対して、最初の3日間で目標金額を達成、最終的には目標金額を大幅に上回る824万円を獲得した。READYFOR? で展開されたプロジェクトの中では過去最高となる金額であるが、その成功の要因としては、まず、同プロジェクトが東日本大震災に対する復興支援活動の一環であったことがあげられよう。

東日本大震災が日本で発生した未曾有の大惨事であったことから、東北という地域を超えて日本全国各地から支援が寄せられた。資金を提供する側としての納得度という点からすると、当時、震災からの復興支援活動以上に必要性を感じたプロジェクトはなかっただろう。次に、図書館という存在が、宿題や受験勉強、ときには友人や知人との憩いの場所として、誰もが利用したことがあるくらい身近な存在であることがあげられる。図書館の価値は大なり小なり誰もが体感しており、図書館の存在しない地域社会は存在しないといっても過言ではない。

つまり、同プロジェクトは必然性や親近感のある“自分ごと”として受けとめられ、支援する側にとっても共感度の高いプロジェクトであったということだ。支援金額でみても、3,000円、1万円、2万円、10万円という4つの寄付プランを提示していたにも関わらず、寄付単価は9,565円となり、1万円近い寄付単価を達成することができた。クラウドファンディングは少額の資金(寄付)を獲得するのが狙いだが、良い方向に期待を裏切られる結果となったわけだ。

企業都合で開発した製品やサービスが市場に投入されては姿を消していく中、企業においてもこうした“共感”を意識したマーケティングの重要性を見直すべきであろう。消費者に共感してもらうためには、製品やサービスの単なる機能や価値といった側面を訴求するだけはなく、“自分ごと”として共感してもらえるような背景にも意識を払わなければならない。必要なのは、こうした共感のポイントがどこにあるかを見つけ出し、製品やサービスの購入に繋げることができるのかという仕組み作りである。クラウドファンディングで紹介されている NPO や NGO が実施するプロジェクトから学べることは多い。

執筆:長浜洋二
記事提供:株式会社ビデオリサーチインタラクティブ