全米 IR 協会(NIRI)は10月17日、「情報開示における企業ウェブサイトの利用調査2012」を発表した。これはソーシャルメディアで先行する2,038の米企業からの調査結果だ。

このなかでまず、「自社ウェブサイトだけで重要情報の開示を行ったことはまったくないか」という質問に注目が集まった。この問いに、「イエス」とする回答は92%を占め、88%が「重要情報の開示を自社ウェブサイトだけに限る意向はない」というのだ。ここで、なぜ「自社ウェブサイトだけで〜」という質問が用意されているのかと思う向きもあるかもしれない。これには次のような事情がある。

米国企業での重要情報の開示は、2000年に米証券取引委員会(SEC)が決めた公平開示規則に沿って行われる。その公平開示規則の施行にあたって、SEC は重要情報の公表モデルを示し、発信する情報をプレスリリースで発信し、同時に SEC に電子ファイルするとしていた。そして決算発表など IR 関連の発表がプレスリリース配信業者に発信され、それから多くのメディアやインターネットのニュース・プロバイダーに配信される仕組みが出来上がった。21世紀に入ってからウェブサイトは大きく進展し、ウェブ2.0時代を迎える。そして2008年8月、SEC は公平開示規則の枠内で、自社の重要情報を自社ウェブサイトやブログを使って開示できるとする「企業ウェブサイト・ガイドライン」を発表。

これで、まずプレスリリースを行うとした公表モデルを変更する企業が登場した。2010年4月、グーグルが自社の IR サイトでファイナンシャル・ニュースとして同年の第1四半期の決算結果を掲載し、リリースの PDF 版に決算サマリーのパワーポイントもアップロードすると、同年10月にはマイクロソフトが続いた。

今回の調査によれば、「企業サイトだけを重要情報の開示チャネルとする」という回答は8%であった。12社に1社の比率だ。社数で160社を上回る数である。しかも時価総額の大きな企業ほど、その比率は高く、今後は「自社の企業サイトだけで――」という意向も高い。

多くの米企業は、いまのところ、重要情報の開示で15を超すチャネルを利用している。具体的には、1)年次報告書(10−K)や半期報告書(10-Q)など SEC(米証券取引委員会)へのファイリング(91%)、2)有料配信サービスによるプレスリリース(89%)、3)パブリック・アクセスが可能なカンファレンス・コール(電話会議)やウェブキャスティング(67%)――がトップ3を占め、2010年に行われた前回の調査と同様の結果だった。

半数を超す回答者が挙げた発信ツールは、この3つに加えて E メール(60%)がある。2010年には39%だったから今回、大きく増加したことが分かる。2010年の調査で10.5%だった RSS は今回、横ばいだった。同様に1%だった Twitter は10%前後になり、存在感を示した。また、ゼロ回答だった YouTube が1桁の数字を獲得したのも目を引く。StockTwits、アプリ、LinkedIn といったソーシャルメディアも重要情報の開示チャネルの調査対象となった。しかし、現時点ではどれも20%を超える数字を獲得出来ていない。

こうした情報の開示をめぐる方法やチャネルの選定にあたっては、関係する情報の重要性や法務アドバイザーが最も重要なポイントになる。コストは論点としては最後にくる問題だという。ちなみに、ウェブサイトによる情報発信が主流になっても、各社が費やすプレスリリースの年間コストは平均すると49,373ドル(約3,950万円)だった。これは2010年比で29%増だ。

執筆:米山 徹幸

記事提供:株式会社ビデオリサーチインタラクティブ