企業が生活者とコミュニケーションしていくには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。デンマークのビール会社カールスバークのベルギーにおけるキャンペーン「バイカーズ」には、生活者の心を動かすストーリーがありました。

これは、カールスバーグのベルギーでのキャッチコピー「That calls for a Carlsberg(こんなときはカールスバーグ)」を浸透させるためのゲリラ的プロモーション。以下のドッキリ的なシーンを撮影し、編集した動画を YouTube に流すことで大きな口コミを得ました。

舞台は、ベルギーのとある映画館。全館借り切って、150席のうち148席にはいかにも悪そうなバイカー(暴走族)たちを座らせます。空いているのは中央部の2席のみ。何も知らないカップルが残り2席のチケットを買って映画館に入ってきます。入ってきたカップルは一様にギョッとします。何しろ、館内は見るからにガラが悪くヤバそうでいかつそうな男たちばかり。中央の席に座るには、そんなバイカーたちの足の前をグイグイと進んでいかなければなりません。途中でいちゃもんをつけられるかもしれない。でもその2席以外の選択肢はありません。映画を観たければ、その席へ行くしかないのです。バイカーたちは、入ってきたカップルたちを険しい表情でにらみつけます。どう考えても、トラブルに巻き込まれそうな予感が大。多くのカップルは恐れをなして退散してしまいます。大きなポップコーンを買ってきたにもかかわらず帰っていくカップルもいました。しかし、中には勇気を出して空いている席に座りにいくカップルもいます。男性は逃げ腰なのに、女性が勝手にどんどん入っていくというカップルも。

そして、勇気を持って席についたカップルに対しては、スポットライトがあたり隣の席の男たちからカールスバーグが手渡されます。それから、会場中のバイカーたちが拍手でカップルを祝福するのです。カップルたちはドッキリとわかって、ホッした表情で笑顔になってカールスバーグを飲みます。スクリーンには、カップルの勇気を讃えるように「That calls for a Carlsberg」というキャッチコピーが映されます。

これらの一連の様子を編集した動画は、YouTube で1,600万回以上再生される人気コンテンツになり、Facebook や Twitter でも何十万人にシェアされていきました。さらに、ニュースやブログなどにも多数取り上げられブランドの認知度は著しく上昇しました。実際にカールスバーグのベルギーでの売り上げも大きくアップしたとのことです。

実はこのプロモーション、前回のこのコラムでご紹介した TNT テレビのドッキリキャンペーンと同じ制作会社がつくったもの。どちらも、その場にいる限定された人たちに対するゲリラキャンペーンですが、それを編集し動画サイトにアップすることで、爆発的なバズを産んだのです。もちろん、ただドッキリを仕掛けて動画で流せばいいわけではありません。そこには共感できる、そして人に伝えたくなるストーリーが必要です。

今回の映画館での動画は、カップルを自分におきかえて感情移入できるストーリーになっているのがポイントだと言えるでしょう。また、ホッとした時に飲むビールがうまいことも、誰もが共感できます。そんな共感できて感情が揺さぶられるストーリーがある動画だったからこそ、観た人は誰かに伝えたくなり SNS でシェアされていくのです。

あなたの会社のコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?

執筆:川上 徹也
記事提供:株式会社ビデオリサーチインタラクティブ