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実質 CTR は約10% -- 「ソーシャルエキスパンドアド」はディスプレイ広告復権の起爆剤となるか

japan.internet.com 編集部
2012年8月9日 / 10:00
 
 
インターネット広告のスタンダードであるディスプレイ広告。最近では画像だけでなく動画やフラッシュコンテンツなどのリッチメディアや閲覧履歴などを元にしたターゲティング技術の進歩により、企業のブランドマーケティングやセールスプロモーションに大きく貢献している。しかし一方で、ネット視聴者が広告をクリックして広告主サイトを訪問する率(CTR)やそこから購買などのアクションが発生する率(CVR)は低水準が当たり前になり、ディスプレイ広告は「見せるだけの広告」となってしまった感は否めない。

しかし、ミクシィが2012年7月に公表した、スマートフォン版「mixi」で展開した新しいバナー広告「ソーシャルエキスパンドアド」の実施効果は、ディスプレイ広告に"革命的"とも言える程の新たな可能性を十分に感じさせる内容となっている。担当者に取材した内容を交えながら、その効果や今後のディスプレイ広告の可能性を検証しよう。

● 「ソーシャルエキスパンドアド」とは何か

ミクシィが展開した「ソーシャルエキスパンドアド」は、スマートフォン版「mixi」に掲載されたバナーをクリックすると、バナーそのものが下部にエキスパンドして画面いっぱいにコンテンツを表示するというもので、ユーザーは画面遷移することなく簡単なソーシャルコンテンツなどを楽しむことができる。

そして、自分が広告コンテンツに参加すると、その内容は自分のタイムラインで友人に共有することができ(非公開も可能)、また友人が閲覧する広告バナーにも「誰が参加した」ということが表示されるようになる。つまり、広告コンテンツへの参加者が増えることで、広告とユーザーのタッチポイントが「通常のバナー」「参加した友人が表示されたバナー(ソーシャルバナー)」「タイムライン」と3種類に拡大するのだ。

● 通常のバナーが形を変えて成長したことで、実質CTRは約10%を達成

この広告によって得られた効果は、バナーインプレッション数に対する広告主サイトへの誘導(CTR)が約10%と非常に高い。一般的なバナー広告による CTR が0.1%〜0.3%と言われる世界で、この数字は驚くべき数字だ。ちなみに、具体的な数字は非公表だが、広告インプレッションを見た人の中で、実際にソーシャルコンテンツを体験した人の割合は、この CTR よりも更に高い。

この広告施策は、特にユーザーを惹きつける強いコンテンツを訴求しているわけでもなく、特殊なキャンペーン設計をしているわけではない。このキャンペーンで展開したコンテンツは、誰でも気軽に楽しめる簡単なソーシャルコンテンツだ。なのに、これほどの数字を叩き出したのは、なぜなのだろうか。

「ソーシャルエキスパンドバナー」の効果イメージ図
「ソーシャルエキスパンドバナー」の効果イメージ図

この「ソーシャルエキスパンドアド」が成功した最大の要因は、バナー広告を起点としてユーザーと広告の接触機会が"増殖する"という点だ。つまり、誰かが通常のバナー広告を見つけてコンテンツに参加すると、それがタイムラインを通じてその人のソーシャルグラフに拡散する。そしてまた、友人が閲覧するバナー広告には参加している友人が表示され、バナー広告に付加価値がつくことになる。普通のバナー広告が、参加者のソーシャルグラフに拡散し、あるいはソーシャルグラフという付加価値によって変化しながら、クライアントサイトの訪問に繋がる入口を増やし続けるのだ。

● 成功の背景にはソーシャルグラフによる強い波及効果

その証拠に、今回の「ソーシャルエキスパンドアド」のコンテンツ訪問者の内訳を見てみると、通常のバナー広告経由が約0.5%であったのに対して、ソーシャルバナー経由は約2%と約4倍、そしてタイムライン経由が約97%と圧倒的に高い数値を出している。しかも、バナー広告の露出開始から1週間のコンテンツ訪問者数の推移を追ってみると、開始時は通常の広告バナーによる誘導がほとんどを占めているが、数日でソーシャルバナー、タイムラインからの誘導が追い越し、更に日を追うごとに加速度的に伸びているのがわかる。

これほどの効果の高さに貢献しているのは、ソーシャルアドの醍醐味である「友人が紹介する広告」という付加価値だろう。一般的なバナー広告は企業が一方的に発信するものであり、興味がなければユーザーが意識して目に留める可能性が少ない。しかし、友人が広告の中に登場するソーシャルアドであれば、広告に"友人が勧めている"という付加価値がつき、そしてそこから参加した人は従来よりも高い興味・関心を持っていることが期待できる。また、タイムラインに参加した広告コンテンツが表示された場合は、もはやそれは広告の域を超えた存在となり、友人は広告に対する独特の抵抗を一切感じることなく広告コンテンツに接触することが可能になる。サイトに表示されたバナーという存在が、従来型の広告から友人同士のコミュニケーションスペースになることで、広告がコンテンツ化しているのだ。

「ソーシャルエキスパンドアド」は今までのバナー広告では諦めざるを得なかったクリック数や訪問者のアクティビティの低さを、ソーシャルグラフを活用した露出・拡散という新たなインプレッションや付加価値を生み出すことで改善することが期待できるものだ。この施策は、企画力・制作力が求められてきた現在のソーシャルマーケティングの在り方に、明らかに一石を投じるものであり、「バナー広告×ソーシャル」という組み合わせによって、マーケターや広告代理店が現在のネット広告で抱えていた課題を一気に解消することができる可能性を秘めているのだ。

● mixi ユーザーに最適化されたサービス設計が高い効果に繋がる

今回の広告施策で生まれた効果「実質CTR10%」を簡単な数式に当てはめてみると、例えば、バナーインプレッションを1000万に設定した場合の訪問者数は100万人となる。単純に考えても、これは通常の広告施策では考えられない程高く、また現在ソーシャルマーケティングのスタンダードになりつつある Facebook のプロモーション利用でも実現できないレベルだ。

これほどの施策をミクシィはなぜ実現できたのか。ひとつは、mixi と Facebook のソーシャルグラフの質の違いだ。Facebook は主に仕事で関係を持っている人同士の繋がりが強く、繋がっている人の数も多い。一方で、mixi はプライベートで深い付き合いのある限られた人同士で繋がっている場合が多く、ソーシャルグラフの規模が47.9人が平均。いわゆる"旧知の仲"が多いのが特徴だ。「ビジネスかプライベートか」という違いはソーシャルグラフに生まれるエンゲージメントに微妙な違いを生み出す。それがソーシャルグラフに情報が投稿された場合の情報の"信頼性"や"関心の持ち方"の違いに繋がり、「ソーシャルエキスパンドアド」はソーシャルグラフを通じて広告が一気に拡散したものと考えられる。

もうひとつは、ミクシィと Facebook の広告サービス設計に対する考え方の違いだ。Facebook は全世界で展開しているプラットフォームであり、広告もプラットフォーム化。世界中の広告主が自由に利用できる利便性を追求した分、システム化しすぎるが故に日本のユーザーの利用シーンに最適化することが難しいという課題がある。しかし、ミクシィの展開する広告サービスは、日本生まれの mixi が、日本の広告事情やネット視聴者の実態を理解した上で、mixi のソーシャルグラフにおけるコミュニケーションの創出に最適化されたサービスを設計している。mixi を利用するユーザーのモチベーションを高め、ユーザーが楽しめる広告という点が、この広告のアクティビティの高さに良い影響を与えているのだ。

● ミクシィは広告主の参入障壁を下げることができるか

しかし、誰でも簡単に参入できる Facebook 広告に対して、mixi をソーシャルマーケティングの場として活用するには、高い企画力や制作能力が必要という参入障壁の高さが言われていた。企業にも提供している「mixi ページ」は、この企業の参入障壁を下げるためのひとつの施策だが、今回高い効果を出した「ソーシャルエキスパンドアド」に関しても、市場を拡大するためには、あらゆる広告主が簡単に活用できる"敷居の低さ"が求められる。

ただ、今回成功した「ソーシャルエキスパンドアド」で行われたキャンペーンを見る限りでは、広告主は特殊なキャンペーン設計をしているわけではなく、広告クリエイティブも一般的な広告バナーと大きな差はない。ソーシャルグラフが情報拡散の原動力になるという大きな付加価値がついたという点を除いては、一般的なディスプレイ広告の施策と同じスキームであり、広告主は今までの広告とほぼ同じ考え方で「ソーシャルエキスパンドアド」を活用することができるだろう。mixi におけるソーシャルマーケティング施策によって生まれた過去の実績を、誰でも活用できるプラットフォームにダウンサイズしたものと言うことができ、今後ネット広告市場で一気に活用が拡大することが予想される。
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